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2018.08.29

八丁味噌ブランド論争に揺れる愛知県岡崎市、伝統を重んじる老舗2社のプライドとは?

 2017年12月。農林水産省は伝統的な生産方法や気候・風土・土壌などの生産地等の特性が、品質等の特性に結びついている産品の名称(地理的表示)を知的財産として保護する「地理的表示保護制度(GI)」に、愛知県の八丁味噌を登録した。

 八丁味噌は愛知県を代表する味覚であり「名古屋めし」の代表的調味料であるとの特性が登録理由に記されている。これだけ読むと素直に納得してしまうのだが、実は大きな問題が隠れている。

老舗2社が登録から外れる

 それは、農林水産省が八丁味噌として認める品質と製法が伝統的製法と違いすぎるからだ。このままでは伝統が衰退してしまうとの声が上がった。声の主は八丁味噌の元祖といわれる合資会社八丁味噌(以下、カクキュー)と、株式会社まるや八丁味噌(以下、まるや)の2社。

合資会社八丁味噌(カクキュー)

株式会社まるや八丁味噌(まるや)

 両社は八丁味噌発祥の地、愛知県岡崎市八帖町(旧八丁村)で道一本隔て営業していることで知られ、昔ながらの伝統的な製法と味を頑なに守るため、2005年に八丁味噌協同組合を設立している。しかし、今回の登録で農林水産省が認めたのは、この2社以外の味噌醤油蔵43社が加盟する愛知県味噌溜醤油工業協同組合が申請した八丁味噌の方。しかも、老舗2社の「こだわり」を大幅に緩和した内容になっていた。

 具体的な内容は次の表を見てほしい。熟成期間や仕込み桶などにかなりの差があることがお分かりいただけると思う。

認定に至った経緯とその後

 これに対し、カクキューとまるやは2018年1月に前述の声明を出し、同3月には行政不服審査請求を行っている。それによると、同組合は2015年6月より八丁味噌を地理的表示保護制度にと、上記表の右側の内容で申請していた。

 ところが、農林水産省より範囲を広げないと「今のままでは登録が困難」と言われ、2017年6月、やむなく取り下げた。すると半年後、八丁味噌協同組合の他、岡崎市、岡崎商工会議所も意見書を出す中、愛知県味噌溜醤油工業協同組合の主張する基準で八丁味噌が登録されてしまったと説明している。

 その後、岡崎市内4つの大学の学長などが中心となり、「岡崎の伝統を未来につなぐ会」が発足。5月末から登録見直しに関する要望の署名活動を始め、6月末には1万8642名、8月初旬までに2万7879名の署名が集まったが、事態は大きく動くことなく今に至っている。

関係者、それぞれの思惑は?

 現時点で農林水産省は行政不服審査請求に対して「審査中」と答えるのみだが、「老舗2社を追加登録する用意はある」と言う。つまり、今のままの条件で折れて納得してほしい、との姿勢を崩さない。*2018年8月中旬時点

 八丁味噌が岡崎市で生まれ、老舗2社の造り方が昔ながらの伝統的な製法であることは紛れもない事実だが、他にも造っている蔵はたくさんある。生産コストなどを考えると厳しい基準にしたくない。愛知県全体で八丁味噌を盛り上げてほしいと考えているようだ。

 愛知県は2018年1月の大村知事定例会見でこの問題に対し、県が直接関わっている問題ではないとしながらも、「八丁味噌は愛知の食文化を代表する貴重な地域資源。農林水産省には経過や事実関係、判断の根拠を八丁味噌組合に十分説明し、話し合い納得してもらえるよう調整してほしい」と、一歩引いた形で俯瞰している。

 そして愛知県味噌溜醤油工業協同組合は「老舗2社の基準で八丁味噌をくくられてしまうと、みそ業界のすそ野が広がらない。ジャパンブランドとして増やせなくなる」と主張している。

 解決にはまだ時間がかかる気配が濃厚だ。

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