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入社3年目社員の本音「100万人に読まれることを肝に命じて、様々な角度から伝えていかなければいけない」カタログハウス・市川健さん

2018.08.22

100万人の心をつかむ方法は?

「100万人に読まれていることを意識しなさい」、これは創業者の相談役から常に言われていることです。通販生活では新商品の紹介は少なく、誌面に載るのは継続して売れ続けている人気の商品で。簡単に済まそうと思えば、これまでのバックナンバーから同じ商品の記事を引っ張り出して、誌面に載せればいい。

 ところが読者は僕らが驚くほど、通販生活の記事を熟読していますから。手を抜けばすぐに見抜かれて、ガクッと部数が落ちてしまう。自分の書いたものが、100万人の読者に見られていることを常に肝に命じて、商品をいろんな角度から伝えていかなければいけないわけです。

 例えば、東日本大震災が起こった2011年に発売されたクールカーテン。当時は節電がとりわけ意識されていて。クーラーを使わなくても、部屋の中を涼しく保つことができるこのカーテンは、今も安定した売り上げがあります。

 これまでのクールカーテンの紹介記事は、どうしても自分の部屋の一角の話になってしまう。もっと広がりをもって商品を紹介できないか。そうと思っていたところに、某大学で教室にこのカーテンを採用したという話が舞い込んできて。早速、取材に出向きました。

 この大学は高台にあり、校舎の前は校庭で遮るものがない。熱風が吹き込んで暑いと学生から苦情がある。この学校の先生が自宅でクールカーテンを使っていて、「僕が大学にこのカーテンを提案したんです。電気代も削減できるし、涼しくて勉強にも集中できると好評ですよ」取材ではそんな話を聞くことができた。

 これは来たぞ!機能を紹介する“知”も、商品の心地よさを表す“情”も、完璧に表現できている。部屋の一角の話ではなく、これまでにない広がりをもたせるカーテンの使い方も記事にできた。申し分ない。よし、これは売れるぞ!そう思ったんですがーー。

 フタを開けてみたら、思ったより売れませんでした。なぜか、自分の部屋と大学の教室ではスケールが違いすぎて、カーテンを使った時の実感が湧かなかったんじゃないか。これが若者の集う大学ではなく、高齢者施設で使われていたなら、読者の捉え方が違っていたかもしれない。反省会はそんな話し合いになりました。

 逆に同じ号で大好評だったのは、コンパクト除湿機です。20年間売り続けているうちのベストセラー商品ですが、この号では八丈島在住の方を紹介しました。八丈島は湿気の多い地域で、何もしなければ衣替えの時期にタンスから取り出した学生服が、カビで真っ白くなってしまうという。誌面で紹介した方はこのコンパクト除湿機を4台購入して。押入れには専用のコンセントまで取り付けて、除湿機を使っていました。

“知”も“情”もデープで、説得力がある記事だったからでしょうか。この号が発売されると、コンパクト除湿機は完売しました。

 創業者で相談役の机は、僕らと同じフロアにあり、よく社員を集めて意見交換をします。僕らにとって相談役は近い存在ですが、時には商品のページをよりよくするために、相談役の一言で取り掛かっていた企画が、クルッと変わることもあります。

 社会問題系やその号の表紙のテーマは、だいたい相談役が決めます。僕が入社して半年ほどした頃でした。次号の表紙を飾るテーマが決まらなくて、相談役が社内でアイデアの公募したんです。永六輔さんが亡くなって間がない時だったので、僕はこんな提案をしました。

「昨今、スマホばかり見ている人が多い。社会問題にもなっています。今こそスマホから顔を上げて、『上を向いて歩こう』というのはどうでしょうか」

 僕の提案を聞いた相談役はニコッと笑って、「キミ、天才だね」って。数匹の猫が上を向いているビジュアルに、『上を向いて歩こう。』と、大きくロゴの入った通販生活の表紙を目にした時は、感激しました。

 紹介する商品を60〜70代の層に訴えかける手腕もさることながら、現在82才という創業者、若者の気持ちをつかむことにも、長けているようなのである。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama

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