もっと社員をしなやかにしなければいけない
◎企画は持ち帰らず〝瞬発力〟で解決する
――安藤家の三代目の経営者として、一番大事にされていることは何ですか?
「私は『経営=デザイン』だと思っているんです。これはパッケージデザインなどの小さな意味ではなく、ブランドや組織、企業イメージといったすべてをデザインすることです。それを一番鮮やかにやったのがアップルのスティーブ・ジョブズで、彼は人々の生活までデザインしましたよね。日清食品が商品やテレビCMなどでおもしろいことをやるのも同じこと。ブランドや会社のデザインでもありますし、社員がおもしろがることで組織が活性化する施策でもある。そして最終的に企業イメージだけでなく、人々の食文化をどうデザインするのか、ということにつながっていくんです」
――仕事をするうえで心がけていることはありますか?
「『瞬発力』ですね。発案の、アイデアの瞬発力。私は企画を考える時に、仕事を持ち帰らないんですよ。社員やクリエイターの方々とジャムセッションのようにその場で考えて、決めてしまうんです。即興ならではの楽しい企画が出せるんです」
――2016年に話題となった『謎肉祭』のネーミングも安藤社長の即興アイデアだったとか。
「『カップヌードル』45周年の記念商品だったんですが、最初は『ミートショック』という商品名で提案されたんです。でも『『謎肉祭』のほうがおもしろくないですか?』と役員会で言ったら、『謎肉だなんてふざけてる』と怒られて(笑)。でも私は若い世代の『カップヌードル』ファンを増やしていくうえで、強いキラーワードだと感じたんです。だから最後には『勝手にやってしまえ』と(笑)。営業の担当者たちも最初は『謎肉祭ですか……』とギョッとしてましたけど、その頃には仕事を楽しもうという素地ができあがっていたので、大きな抵抗はありませんでした。だって絶対に『謎肉祭』の方が売れそうじゃないですか!」
――『カップヌードルBIG 謎肉祭 肉盛りペッパーしょうゆ味』は即完売、再生産となりました。昨年も『謎肉祭W』、今年春には『謎肉祭の素』、6月からは『珍種謎肉』を販売しています。こうしたスタイルの経営は、この先も続けていく予定ですか?
「私はすぐに飽きちゃうんですよ。ひどい時は、新商品を作っても発売前に飽きてしまう(笑)。我々はトップランナーなんだから、常に新しいことをやらないといけないんです。メディアやユーザーの価値観が変われば、やり方も変えないといけないですからね。それをいかに先端で感じ取れるか、ということだと思うんです。新しいことをやり続けるには、もっともっと社員をしなやかにしていかなきゃいけないと思っています」