これがモグラの好物、ミールワーム
モグラの早死は高カロリーのミールワームをお腹いっぱい食べていることが原因だ。よし、エサを替えようと試みたのですが、モグラは視覚がないから、とにかく慎重な生き物なんです。しかもミールワームは美味しいと刷り込まれている。モグラはミールワーム以外のエサをなかなか食べてくれなかった。かくなる上はゴミムシダマシ科の幼虫、ミールワーム自体を改良し、こんなまずいのは食べたくないと、ミルワームに対するモグラの嗜好性を下げるしかありません。
それまでミールワームにペレットを与え、プリプリに太らせていたんですが、ペレットを止め、乾燥したニンジンやパンを与えてみたんです。さらに徐々にエサを減らしてみると、最終的にほとんど与えない状態にしても、低めの温度で乾燥したところで飼えば、ミールワームは死なないことが分かってきました。
こうして栄養価の少ないカスカスにやせ細ったミールワームを、モグラに与えると、さすがにモグラも嗜好に合わないのか。代わりに用意した細切りにした馬や牛のハツ、低タンパク高カロリーで、体にいいとされる昆虫のコオロギやバッタ等のエサに、口をつけるようになりました。
モグラの状態を見ながら徐々に食生活を改善して、ミールワームのみのエサから、バランスのとれた今のエサに替えるまで、2年ほどかかりました。
今では8割がたのモグラが死んでいたのがウソのように、安定的に飼育ができるようになって、モグラは長生きするようになりました。食生活の改善が功を奏したんです。
モグラの長生きに成功すると、モグラのことがこれまで以上にわかってくる。熊谷飼育員が語るモグラとはどんな生き物なのか。個体別のモグラの性格とは、さらに飼育員として次に目指す目標は何か――、それらについては後編で。
動物園の赤ちゃん秘蔵ショットを公開!
6月29日に誕生したボルネオオランウータンの赤ちゃん。母親のキキは17歳、2007年6月に来園しました。2012年に初出産、6年ぶり2回目の出産です。キキはベテランお母さんぶりを発揮し、落ち着いて面倒を見ています。父親のボルネオは1998年9月来園の33歳です。赤ちゃんの名前はロキ、ラキ、トゥキ、パギ、チョキと候補に上がっていますが、来園者の投票で7月中には決まります。
取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama