■「ガラスの仕切り」で出会いのチャンスも見晴らしよく
ニューヨーク発のコワーキングオフィスが東京にオープンしたのは今年2月。現在東京に4拠点を構える。その第1拠点、六本木のアークヒルズサウスタワーにある拠点 を訪ねた。
デスク、会議室、ラウンジ、キッチン、ドリンクコーナーなどオフィスインフラを整えたオフィススペースで賃貸。現在、世界22か国に進出、250以上の拠点 を運営。日本では現在に東京4拠点ある。
まず目に付くのがスペースの仕切りがガラス張りであること。コワーキングスペースと言えば、共有スペースは別として、パーテーションで“目隠し”されている所が多い。WeWorkはまったく逆だ。エントランスからしてガラスのドア、オフィスと通路の仕切りもガラス張り、会議室も外から丸見えで、どこまでも見通しがよい。
次に驚くのが、そのガラスの扉に入った大手企業のロゴマークだ。だれもが知るIT、通信、金融会社。外資の有名ハンバーガーチェーンのロゴも見える。ここに日本本社を置いているそうだ。外資とはいえ、大企業がコワーキングスペースに本社を構えているとは驚きだ。
コワーキングスペースやシェアオフィスというと、オフィスを借りる余裕のないフリーランスやベンチャーがデスクを借りるといイメージ。つまりスペースをシェアする。WeWorkは違う。スペースもシェアするが、目的は新しい人と出会い、ビジネスチャンスを拡げることだ。
だからWeWorkには個人向けのデスクのみのプランもあるし、企業の一部署、もしくはオフィスそっくり入居するプランもある。フリーランスやベンチャーと、企業がミックスされていることが最大の特長であり、強み。世界の拠点に、みずほ証券、KDDI、ソフトバンク、マイクロソフト、ゼネラル・エレクトリック、HSBCなどがメンバーに名を連ねている。
■シェアオフィスは人材のるつぼ!
2010年、ニューヨークのソーホーからスタートしたWeWork。創業当初は従来のコワーキングスペースビジネス同様、オフィスを借りられないフリーランスやベンチャーにスペースをシェアすることから始まった。場所柄もあろうが、WeWork N.Yに多様な人材、普通の企業ではあまり見られない才能が集まった。まさに人材のるつぼ。そこに大手企業がすばやく着眼した。
「新しい人、才能、刺激との出会い。大手企業といえども、新発想やイノベーションを起こしていくには社内の人材だけでは追いつかない。オフィスも人材も自社でなんとかしてきた時代ではないのです。その“自前主義”の限界に気づいた企業がコワーキングスペースの可能性を見抜き、自ら参加するようになりました」(WeWork Japan CEO クリス・ヒル)
一方、若手の仕事への意識も変化している。一流大学を出て一流企業に就職したとしても、そこで出世を目指すのではなく、ある程度のノウハウを得たら、起業に向けて動く。最近の日本の若者は内向きとか保守化しているなどと言われるが、そうした「組織に依存しない、自分の力を試したいという若者は確実に増えている」(クリス・ヒル)と見る。
■大きな自社ビルはもういらない
自社ビルは今もステータスとしての価値はあるが、それが大きい立派なビルである必要はない。人材もすべて自社でそろえる必要はないという考え方が世界のビジネスの潮流だ。一方、自分の力を試したい人は会社に縛られたくはない。そこにWeWorkの仕組みがマッチしている。
もちろん背景には、自社ビルという巨大な資産を有することのリスクを避けたいという企業側の思惑もある。そのニーズに応えるように、WeWorkは企業の規模の拡大縮小、再編、本社移転にからむオフィス供給を拡大している。世界22か国、250か所以上に拠点をもつのが強みだ。企業としては豊富な候補地から最適なロケーション、広さを選ぶことができるのは大きな魅力だろう。その結果、今やロンドンで、オフィスをもっとも多く提供しているのがWeWorkだ。コワーキングスペースのオフィス占有率がナンバー1になったということだ。創業地ニューヨークではナンバー2だという。