■今の給料の3、4倍は軽く稼げるが…
「私、ポルトガルに転勤になったの。一緒にポルトガルで暮らしましょう」半年ほど前、そんな誘いの言葉を、外資系企業に勤めていた日本人の彼女からもらいました。チェニジアはポルトガルと同じ地中海に面した国で、生活も習慣も文化も似ています。彼女は当然、僕が喜んでうなずいてくれるものと思っていたみたいですが、
「イヤです。僕は日本で暮らします」そう言い張り、彼女とは別れました。
僕は日本の食べ物が好きです。チェニジアの大学ではドローンがたった一台しかなかった。ところが今、憧れのドローンを何台も自分の手で、実用化できるように開発を担っています。日本でキライなのは納豆とトロロだけ。
「マジョディのようなITのエンジニアは、世界的にも少ないんだから、シリコンバレーにでも引っ越して、自動運転の車の仕事に就けば、今の給料の3、4倍は軽く稼げるじゃないか」そう言う友達は何人かいます。僕は笑顔で彼らの話を聞いている。
アメリカで暮らす気はありません。何故といって、アメリカは誰でも銃を持っている。世界中で日本ほど治安の良い国はありません。
昨年の12月の秋葉原での記者会見で、初めてデモフライトをしました。マスコミ40社の前で、室内でドローンを飛ばして。当時はまだWi-Fiの電波と混線することがあって、冷や汗ものでしたが、何とか部屋の中をあらかじめ決められたコースに沿って、飛ばすことができました。今年の10月から、ビルメンテナンスの会社がこのドローンを実用化し、契約先のオフィスで飛ばす予定です。
「ドローンを組み合わせて新たなサービスを提供する、コンサルティングとシステムのインティグレーターがうちの業務でして、警備だけでなく、今後はドローンを使ったインフラの点検や、物流等に利用することも当然、視野に入っています」(広報担当者)
僕は今、1DK家賃7万円のアパートに住んでいます。チェニジにはないスタイルですが、狭くてあまり動かずに用が足せて便利、慣れました。納豆とトロロ以外、日本のいろんなことに慣れました。
ステップ・バイ・ステップで細かいことを積み上げ、形にする日本式のやり方、違うプロジェクトに生かしていく自信があります。
取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama