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入社4年目社員の本音「広報マンとして会社のことを知らなすぎた」ヤマハ発動機・石田大樹さん

2018.06.04

■原稿チェックは筋違い

「記者さんは具体的な数字を上げると、興味を示すよ」

それは上司のアドバイスでした。そこで、本社に隣接する企業ミュージアムの累計入場者数が、200万人を達成したニュースリリースを出した時に、サブタイトルに“100万人を達成してから6年間で200万人達成!”と謳ったんです。記者は興味を持ってくれるかなと思ったら、
「広報さん、これ6年じゃなくて、7年じゃないの」と指摘をされまして。記者さんの方が僕よりも詳しい。

「あっ、申し訳ありません」慌ててその場でプレスリリースを訂正したんですが、直ちに間違いの詳細は、上司に報告しました。

「今度からちゃんとしっかりチェックして、気をつけるように」僕の父親ぐらいの年代の穏やかな上司は、あまり厳しく言う人ではありません。

でも一度だけ、長年広報マンとして経験を積んでいる上司に、いささか強い口調で諭された言葉は今も心に残っています。それは雑誌社からの電話取材を受けた時でした。

「記事ができたら見せてください」取材が終わって、何気なく僕が言ったことを上司は耳に挟んだんです。

「石田くん、広報マンとして、それをメディアに言ってはダメだ」

うちがお金を払うピーアールやタイアップでない限り、“原稿を事前に見せてくれ”はご法度だと。

「うち発表や提供した情報に基づいてメディアが書くのだから、うちが原稿をチェックするのは筋違いだ。そういうことをメディアに要求すると、ヤマハの広報マンの質が問われる」

発表したり提供した資料に基づき、良きも悪しきも受け取ったように書いてもらう。それによって宣伝やピーアールでは表現できない、うちの会社の真の価値や社会的な役割が、自ずと社会に伝わっていく。

広報マンの仕事を通して上司の言葉の背景にある、そんな意味が徐々に理解できるようなると、自分の勉強不足と未熟さを実感しました。

筆者の個人的な思いを言えば、ヤマハ発動機の広報グループの上司の言葉を、日本中の広報マンは反芻してもらいたいとも感じるのだが。

広報マンとして失敗続きの石田さんだが、ホームランをかっ飛ばすような成功談は後編で。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama

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