向かったのはハワイ出身のアメリカ人が紹介してくれた、ダウンタウンにある某中古レコード店。タクシーに住所を言ってナビが示した場所で降りたものの、看板とかがまったく見当たらない。かなり探した末にカフェの店員に尋ねたら、あっさり、このビルに2階にあるという。広々とした店内は、さすがハワイだ。まずは、買い取りを頼んだ。日本での買い取りは1点1点状態をチェックし、パソコンで相場を調べて査定する(売り主の前で査定するではないので推測だが、たぶんこうだ)。だがこちらの店員氏はディスクのコンディションを確かめることもなく、さっとジャケットを見ただけで、ひと声$40。作戦失敗なり。売らずに、いつかロンドンで再トライすることにした。
続いて、本命のお買い物。だが、レコードの在庫はかなり少ない。僕がよく行くディスクユニオン新宿ロックレコードストアの10分の1、いや20分の1くらいか? さらに“どの国の盤か?”(全部US盤だから必要なし?)、“ジャケットとディスクのコンディションは?”(状態のいい順に、未開封新品のMint、EX+、EX、EX-、VG+、VG、VG-……と評価され、僕はVG+以上を買う)、“マトリクスは?”(マトリクスについては以前書いた記事を参照)、といった、日本の中古店では当然のごとく明記してある情報はなく、売値しか表示されていない。
しかしここまで来て何も買わないという選択肢は僕にはない。気合いを入れて選んだのは以下の通り。まずは60年代のアメリカのロックバンド、SPIRITのデビュー作『SPIRIT』。これはいつか買おうと思っていたアルバムだ。というのも、ツェッペリンの「天国の階段」は本作A面4曲目「Taurus」の盗作だと訴えた、いわくつきのアルバム(裁判結果は盗作に非ず)なのだ。帰国後聴いてみたが、僕には似ていると言えば似ている程度。曲そのものは、幻想的なアコースティック・インストゥルメンタルで、心地いい曲だ。マトはA面AA、B面ABなので、たぶんマト1の大当たりだ。そしてそのSPIRITのセカンド。プロモ-ション盤(=マト1)だった。日本にはプロモ盤だけを集める人もいるらしく、買い取り価格が結構高い。聴いてピンとこなければ、買い取りで思わぬ価格がつくことを期待しての購入だ。さらにU2の『焰』。これもプロモ盤だ。
『THE FAMILY THAT PLAYS TOGETHER』/SPIRIT。ジャケット下方に貼られた白い紙でプロモ盤とわかる
『焰』/U2。ジャケット中央上、U2という文字上の金色の文字(かすれている)がプロモ盤であることを示している
最後はニルヴァーナの12インチシングル「Smell Like Teen Spirit」のUK盤(US盤以外もあった!)だ。凄まじい音圧のUS盤を持っているので、UK盤と比較試聴しようと思い立ったのだ。このUK盤は$20。US盤は約1万円(ただしプロモ盤)だったので、お買い得かもと相場を調べるべく、中古レコード売買サイトDiscogsを見るとUK盤が存在しない。画像のようにジャケット裏に“MADE IN ENGLAND”なるシールが貼ってあるので、てっきりUK盤と思い込んでいたが。そこで表ジャケットの”SPECIALLY・PRICED MAXI・SINGLE“という印刷に注目し(US盤にはない)、ジャケットにこの印刷がある国はどこかと探すと、ドイツ盤だけの特徴とわかった。老眼にむち打ってレーベルの小さな生産国クレジットを見ると、made in Germanyとある。やっぱり、ドイツ盤。では、あのシールは何だ??? かようにレア盤は買えたものの、期待したほどのスケールのお店ではなく、やや残念だった。
「Smell Like Teen Spirit」/ニルヴァーナ