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アナログレコードの迷宮〝マト1〟の世界

2017.12.10

■連載/元DIME編集長の「旅は道連れ」日記

 アナログレコードがブームだと言われている。しかもブームの中心は、デジタル世代の若者のようだ。CDが登場したのは1982年、それまでは老男若女、誰もがアナログで音楽を聴いていた。CDを初めて聴き、当時の大多数の人はアナログより音がいいと思ったはずだ。その最大の理由は、アナログレコード特有の、傷や静電気から生まれるノイズがないからだろう。

 しかし今や、CDよりもアナログの方が音がいいことに多くの人が気づいている。同じ曲で聴き比べれば、一聴瞭然。特にその差は、CD登場前のアナログ時代に録音された音源では顕著だ。だからCDを持っていても、より良い音で聴くために、アナログプレーヤーを手に入れ、中古のアナログレコードを買うことは、原則としては正しい。

 しかし、アナログレコードの迷宮“マト1”の世界に足を踏み入れると、正しいとは言えなくなってしまう。中学2年生で目覚め、以後人生をともにしてきたロックをいい音で聴こうと、定年を前にオーディオを一新した。CDはリッピングして断捨離、音源はハイレゾで、これが当初の方針だった。70年代ロックもかなりハイレゾ化されていたのでせっせとダウンロードし、CDよりいい音に満足していた。しかし、“マト1”に出会い、世界観が一変してしまった。

 “マト1”とはマトリクス1の略語で、書籍で言えば初版に相応する。書籍では初版も増刷後の2版も3版も、読むには同じだ。古い本なら初版には骨董的な価値があるかもしれないが、増刷された本の文字は読みにくいとか印刷された活字が薄い、ということはない。

 ところがレコードの場合は、初版が圧倒的に音がいいのだ。何故かを説明するには大変な文字数を要するので簡単に言う。初版で使うラッカー盤(マスターテープから作られる盤で、レコードに直接プレスするスタンパーの大元)は、アーチストをはじめとする関係者がよりいい音にすべく全力を挙げて制作する。だが1枚のラッカー盤を元に生産されるレコードの枚数には限りがあり、2版を作るには新たなラッカー盤が必要となる。

 だが残念ながら2版以降には、初版ほど力が入っていないのだ。またイギリスのアーチストならイギリス、アメリカのアーチストならアメリカと、そのアーチストの本国で生産された“マト1”が最も音のいい“マト1”とされる。というのも、レコードの元となるオリジナルマスターテープは通常本国で制作・保管され、外国にはダビングしたテープが送られるからだ。

 とはいえ以上は原則論で、音がイマイチの“マト1”もあれば、本国盤よりも日本盤の方が音のいい作品もある。値段も10万円くらいするピンク・フロイドの『狂気』もあれば、3000円くらいのイーグルス『ホテル・カリフォルニア』もあり、千差万別だ。ちなみにこの2枚、ともにすこぶる音がいい。

ただし、何を持って“マト1”とするかという定義もややこしく、『狂気』の“マト1”は実際は“マト2”で、『ホテル・カリフォルニア』の場合は“マト1”ではなく7E規格と呼ばれる。この辺を言及すると訳がわからなくなるので、ここでやめとおこう。


『狂気』


ブルートライアングルと呼ばれるレーベルは、マト1のレコードだけに使われ、マト1の証になる


『ホテル・カリフォルニア』

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