■自分で配信してみたら…
「ユーザーの気持ちをもっとわかるために、どんな方法があるでしょうかね」
ある日のことです。アフターファイブの飲み会で、そんな話題で盛り上がりまして。
「じゃあ、堤さん、自分で配信してみればいいじゃない」「あっ、それ面白そうですね」
先輩の何気ない言葉に、私は手を打つようにうなずきました。そこでさっそく、公式チャンネルを一つ作り、LINE LIVEで配信を開始したんです。
『私はLINEの社員です。LINE LIVEの企画を担当しています。何でもいいですから意見をください』そんな内容のメッセージを配信して。寄せられたユーザーからの意見は興味深かったですね。その中に『もう少し、プライバシーを守れるような機能を入れてほしい』という内容のコメントがありました。
今のLINE LIVEの仕組みですと、誰でも自分のことをフォローできる。“フォローしたい”という申請が来た時に、OKかNGか判断できるような機能がほしいというリクエストでした。若いユーザーは自分の姿をみんなに見てもらいたいはずだと、私たちは考えていました。でも、ユーザーの中には自分の知っている範囲内の人だけに、見せたいという思いを持っている人もいることを知りまして。私にとっては新鮮で、今後の機能の追加に参考になる意見でした。
ちょっとショックだったのは、ネガティブなコメントが来た時です。
「この企画考えたヤツ、頭悪いんじゃねえの!?」とか、「自分は頭いいと思って企画してるんだろうけど、ユーザーの心を全然わかってないんだよ」とか。自分で言うのもヘンですが、私はかなりポジティブで。その私が思った以上に傷つくと身をもって知りまして。ネガティブな気持ちのまま、ちょっと配信を続けていくのは難しいなと。
LINE LIVEは十代がターゲットですから、若い子たちを反社会的なものから守っていくために、モニタリングチームが福岡にあり24時間365日、配信とコメントをチェックしています。ユーザーは日常の学校生活の中で、表現できないものをLINE LIVEの配信で表現したいという人が多い。そんな若い人たちを守るためにも、ネガティブなコメントをある程度、触れさせないようにする機能が必要なのかなと。自分で体験することを通して、そんな思いが頭をよぎりました。
歌をライブ配信するミュージシャンを、ユーザーと同じ立場で応援してきましたが、LINEオーディションという企画の担当になったのは昨年でした。エンターテイメント事業部の中のLINE RECORDSチームとLINE LIVEがコラボして、アーティストを発掘しようという試みです。オーディションの審査の様子をLINE LIVEで配信して、その中で総合グランプリを獲得した
「No title」という15才の3人組のバンドが、LINE MUSICという、うちの音楽配信サービスで楽曲を発表したんです。
「No title」の3人が会社に挨拶に来た時に、「人生が変わりました」と言われました。
私は人の人生を変えることに貢献できているんだ……そんな思いを抱きましたね。不思議な気分でした。この3人にファンができて、これから新たなものが生まれていくことでしょう。
学生時代からプロデュースのようなことに興味がありしたが、LINEは特に東南アジアに強い。LINE LIVEもLINEの強い地域に進出していきたい。日本の若い子たちの文化を発信し、アジアの若い子たちの発信も受け入れる、LINE LIVEのライブ配信が、そんな世界のコミュニケーションツールに成長していければ……。
夢は尽きません。
取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama