■連載/あるあるビジネス処方箋
営業などの現場にいる社員が、交通費や取引先との懇親にともなう予算を経理や総務に申請すると、すぐに認められない場合がある。却下されるときすらあるかもしれない。そのとき、怒りが湧いてくる人がいるだろう。「管理部門は現場のことをわかっていない」と思う人もいるはずだ。
今回は、ITベンチャー企業「もしも」の取締役コーポレート本部長・堀直之さんを取材した。もしもは2004年に創業し、06年からはアメリカで普及していたドロップシッピングサービスを日本ではじめて始めて、安定成長を続ける。現在、45万人の会員と36万点の商品数で、日本最大級の個人向けドロップシッピングサービスである。
堀さんには、管理部門の責任者である堀さんになぜ、現場の主張をすぐに認めようとしないか、などを中心に話を伺った。
Q1 現場の社員などから煙たがられている、と思われませんか?
営業などの現場にいる方からすると、人事や経理、総務などの管理部門がウザイと思うときは確かにあるでしょうね。私は管理部門の責任者をしていますが、現場から煙たい存在と思われているかもしれないな、と自覚はしています。社長から管理部門の責任者を拝命したときから、それは覚悟していました。
たとえば、各部署から様々な申請やりん議が私のところへ寄せられます。一例で言えば、「こういう企画を実現したい。そのためにこれだけの額の予算が必要であり、管理部として認めてほしい」といった内容です。
申請が10個、私のもとへ来たとします。内容にもよりますが、おそらく7個については何らかの意見を言うことがあるかと思います。少なくとも、そのまま認めることはありません。
私が申請を拒んだとき、現場の責任者である役員や部長と話し合いをすることがあります。状況いかんでは意見が対立したり、議論になったりすることもありえます。それらも含め、管理部門の責任者をする以上、止むを得ないことと私は考えています。物別れとなり、私を飛び越え、社長に直接、申請することがあったとしても仕方がないと思っています。自分が申請を認めなかったことに後ろめたい思いがないからです。
私の隣に座る広報の小野彩子も上司と一緒に、私を説得しようとしたことがあります。ふだんから仕事に熱心な彼女が真剣に企画を実現させたいと思うから、そのような行動をとるのだと思います。そのことに私は不愉快ではないし、怒ることもしません。
管理部門に申請し、「ダメだ」と言われたからといって、簡単に折れるなかれ、と私は思っています。「これが、会社全体にとって最適解なんだ」と食い下がって議論することも時には必要でしょうね。