Q2 小野さんは、そのあたりはいかがでしょか?
私としては、企画を実現させたいから管理部門に申請をするのです。それが認められない場合は所属部署の上司(事業部長)などに相談し、対応を考えます。その結果として、上司と私が一緒になり堀と再度、話し合うことはあります。
話し合いをしていくと、管理部門の考えがよくわかってきます。堀は、あえて私の部署のことなどをわかっていないふりをして、申請を却下していたことも知ることができます。「わかっている」と言ってしまえば、管理本部の責任者としての判断ができなくなるからだと思います。ここまでして会社のことを守ってくれているのだな、と感じました。
その場で、私の上司と堀が議論になることもあります。上司が堀の意見を聞くうちに、しだいに考えを変えるようになることもありました。こういう話し合いに参加していると、自分の意見を押し通すだけではダメなのだと感じます。
Q3 堀さんはご自身が申請やりん議を認めなかったとき、再度話し合いをすることに不愉快になったり、怒ったりすることはないのでしょうか?
それはないです。現場の責任者や社員と言い争いになるとき、双方がよかれと思い、自分の考えや立場を主張するのです。私も、その瞬間は腹が立つことはあります。きっと相手も怒っているのでしょうね。相手は部署や会社のことを思うがゆえに言ってくるのですから、その思いは管理部門として受け入れるべきと考えています。
ただし、事業部門は売上予算の達成をするために数字を追います。1つの部署としての最適な解を求めることになりがちです。それは当然のことと思います。一方で、管理部門は全社最適につなげるための調整をします。双方の間に意見に違いがあるのは、仕方がないことなのです。
Q4 ご自身が議論の末、打ち負かされることもあるのではないでしょうか?
「打ち負かした」「打ち負かされた」というとらえ方は、前職の金融機関に勤務していた頃にしていた時期があります。今、振り返ると、小さな考えに思います。現在の会社では、管理部門の責任者という重要な立場を与えていただいています。大きなミッションを負うと、「打ち負かした」「打ち負かされた」といった見方は取るに足らないことに思えます。会社全体のことを考えたうえで、現場の言い分や考えが最適と思えるならば、私自身が折れます。それでつぶれるようなメンツならばいらないです。
当社の社員は仕事に熱心ですから議論はしますが、自分の意見にしがみつくことはしません。社員たちは、自分の考えを最適と思っているだけなのです。話し合いの末、もっと最適な解を見つけることができれば、考えをすぐに変えます。
これは私のビジネスにおいての考えですが、相手が議論の末、こちらを押し切って満足するならば、打ち負かされたようなふりをすることも時には必要だと思います。相手を押し切るばかりでは、おそらくいい仕事はできないのでしょうね。管理部門で仕事をするとき、そのような柔軟性を心得るようにはしています。
ただし、社長との1対1の話し合いでは「もう少し、現場のことを考え、柔軟に対応してあげてほしい」とさとされることはあります…(苦笑)。
後編へ続く
文/吉田典史
■連載/あるあるビジネス処方箋