■連載/元DIME編集長の「旅は道連れ」日記
3.7kgのハタを釣り上げた自慢話は、前回書いた。その時、若船長から「ハタは内蔵も食べてください。供養ですから。食べるまで、5日寝かせましょう。鍋が美味いですよ」と言われた。
さて食べるには、ハタを捌かなければならない。釣った魚は自分で捌くことにしているが、こんなに大きいと素人にはハードルが高い。しかも釣りをした当日は2時起床なので眠く、大物との格闘で疲れてもいる。その日は、必要最小限の処理を施すことにした。このサイズでは台所で捌くと鱗が大きいので、あちこちに飛び散ってしまう。そこで風呂にて、鱗を落とし、エラを外し、内臓を取り出す。幸いこの日は暖かく、裸で捌いた約20分間、寒くはなかった。捌いたハタは冷蔵保管だが、大きくて冷蔵庫には入らない。新聞紙でくるみ、釣り用のクーラーに入れた。こういう時、氷を使ってはいけない。なぜなら氷が溶けると、魚体が水に浸り味が落ちる。水を入れて凍らせた、ペットボトルを使うのだ。この状態で、若船長お勧めの5日間、ハタを寝かせることとする。
だが釣り人としては、釣ったその日に何も食べないのは寂しい。そこで、供養の内蔵だ。カワハギに限らず、魚の肝は美味い。ハタの大きな肝に、さっと熱湯をかけて臭みをとり刺し身にする。本来なら叩いた肝を味付けし、カワハギのように薄造りにからめて食べたいところだが、5日後まで肝の鮮度がもつのか不安で諦めた。僕の大好きな魚・鬼カサゴも1kgを超えると肝が大きく、刺し身にして食べる。鬼肝はカワハギよりもしっかりしているので、叩いて和えるより刺し身のほうが断然美味い。ハタもしっかりした肝なので刺し身が正解だったが、味は鬼カサゴに軍配が上がると僕は思った。
もう一部位、(たぶん)腸も少しだけ食べてみた。魚の腸を食べたことはないが、若船長が「ハタは(鱗とエラ以外)どこでも食べられます」と言っていたので、湯通ししてからちょっと醤油をかけて、恐る恐る1cmほど食べてみた。脂が口の中に広がる。ギラギラした脂ではなく、軽くさらりとした脂でとても美味しい。ただし量を食べるとお腹にくるような気がして、残りは鍋の材料とする。鬼カサゴであれハタであれ、かような内臓食べ道楽は釣り人だけの特権だ。