一日の1/3、約8時間もの時間を座って過ごしているという日本人。これは、世界主要20か国を対象とした調査の中でもNo.1で、日本は「世界一座る時間が長い国」ということになる。
座ることはラクなはずなのだが、実は相反する身体リスクもはらんでいる。着座時には、人間の体重の約60%を占める上半身の重みが腰一点に集中、その負担は立っている時の約2倍にもなるそう。現在、日本人の約4人にひとりがいわゆる〝腰痛もち〟であると言われるが、そのほかにも〝座り過ぎ〟による健康リスクは近年さまざまな場面で問題視されている。
そんなな中、今一度考えたいのが、働き方改革ならぬ〝座り方改革〟だ。長時間にわたり余儀なくされる着座姿勢において、いかに仕事に必要な集中力を保ちつつ、健康リスクを回避できるか。今回はそんな観点から開発された先進的オフィスチェア2点について、パーソナルトレーナーの資格を持つ肉体派モデル、山下晃和さんの試用コメントとともに紹介する。
〝座る〟概念を変えるイノベーティブなイス〜コクヨ『ing(イング)』
昨年秋、コクヨからリリースされたのは、前後左右360度自由に揺れるイス「ing(イング)」。座っている状態でも体の動きを止めない、このイスのコンセプトはズバリ〝座るを解放する〟。
座面下に2層の組み合せで動く〝グライディング・メカ〟を搭載。これにより、前傾や後傾、左右や斜めのひねりまで、イスの座面が体の動きに合わせて自然にスイングすることで、座りながら運動できるというわけ。
バネを使用しない重量メカは動き始めの負荷がなく、動いた後にはブランコのような揺り戻しがあるため、安心して揺らすことができるという。
「〝長時間の座り過ぎが体に悪いなら、立って仕事をすればいい〟という意見もありますが、本当に悪いのは座っていることではなく、座り過ぎで体を動かさないことなのです」。そう指摘するのは、早稲田大学スポーツ科学学術院・岡浩一朗教授。その意味でも、「ing」は、座ったままで体を動かせるという点が画期的であり、座って仕事をしながら健康になれる可能性もあるとか。