■あなたの知らない若手社員のホンネ~明治・西村光平さん(27才、入社5年目)~
前編はこちら
20代の部下との良好なコミュニケーションは中間管理職に取って必須の課題だ。そのためには彼らの仕事に対するマインドを知る必要がある。若い世代にとっても、同世代がどんな仕事をしているのか、興味のあるところだろう。この企画は入社3~5年の社員の話にじっくりと耳を傾け、そのモチベーションを紹介する。
第11回目は株式会社明治。菓子マーケティング部調査グループ、西村光平さん(27才)入社5年目だ。
営業職として最初の赴任地、札幌ではクセのあるバイヤーに、バックヤードで2時間立たされたり。厳しいマネージャーに叱咤され出入り禁止になったり。「自分のカラーをしっかり出したほうがいい。意志を持って仕事に取り組め」という大先輩の言葉が脳裏に残る。真摯に接する以外ない、自分なりに営業のコツがわかりかけた頃、長野県の事務所に転勤になり、間もなく大失敗を引き起こす。
■欠品の異常事態
長野ではスーパーの本部の菓子部門のバイヤーさんとの商談が、主な仕事でした。長野県内で多くの店舗を展開するスーパーは社長の権限が強い。その社長がうちの「チョコレート効果」という商品に注目したんです。このチョコレートはカカオポリフェノールという成分を多量に含んでいて、健康志向のチョコレートとして知られている。
「バレンタインデーに向けて、キャンペーンを展開し、これを大々的に売っていこう」と。そんな企画はうちのとっても望むところで、地元の放送局とタイアップして。番組の中で長野の有名なパティシエに、「チョコレート効果」を使ったデザートを作ってもらう準備も整った。スーパーの名前入りのチラシも用意して、「バレンタインデーのプレゼントに最適」「地元放送局の放映もあります」と大きく謳って。需要を見越して大量の商品の入荷も完了した。
さあ、売るぞと思った矢先のことでした。タイアップの番組の放映やチラシの配布の前に、NHKでカカオの効果やチョコレートの効用について、取り上げた番組が放映されたんです。その影響でスーパーの売り場に山積みされた商品が、一瞬のうちに売り切れました。テレビ放映もチラシの配布も迫っているのに、スーパーの売り場に商品がないという異常事態が発生したんです。
バイヤーさんから入荷を催促されても、ただでさえ品薄の商品ですし、バレンタインデーと重なってどうにもならない。
「社長の肝いりの企画ですし、なんとかなりませんか」「少しでも入荷を」「明日、少しなら…」「明日入るの!?何個入るの!」
僕の父親ほどの年のバイヤーさんからは毎日10回以上、電話が入る。そのたびに「すみません!」と。
欠品を解決する手段はない。催促の電話に居留守を使うという方法もあったのでしょうけど、逃げずに一つ一つ誠実に応えるしかないと思った。かかってきた電話には必ず出て謝りました。スーパーの本部を訪ね、バイヤーさんの顔を見て頭を下げて。相手も商品が入荷しない理由をわかっていましたし、僕がそんな対応を毎日しているうちに、不思議と心が通じ合えたというか、バイヤーさんと仲良くなりまして。
あいつは失敗をやらかしたけど、ちゃんと対応してくれた、バイヤーさんはそう思ってくれたに違いない。僕が配転になっても後任者に対して悪い印象は持たない、そんな確信を持ちました。