■MVNOに対する画一的な料金プランを変えるべき
石野氏:Y!mobileがあるのはいいことなんですよ。同じ条件で戦ったら、MVNOがMNOに競争で勝てないのは当然なので。借りている方が貸している方に勝てるわけがない。
石川氏:そうそう。MVNOとMNOを同列で扱うのは間違っている。
法林氏:勝てるはずがない。料金と速度以外の要素で勝てる要素があるからこそ、MVNOは成立しているわけなので。そのために、ショップだったりサポートだったりを削除している。
石野氏:MVNO側に下駄を履かせてあげるような改善をするというか、接続にかかる料金を、みんな同じプランじゃなくて、ドコモと交渉して少し安くしてもらえるとか、Mbpsあたりいくらという貸し方を考え直してみるとか、もっと時間をかけて議論して、深いところを直すべきだと思うんですけどね。
石川氏:今は目的と手段がごっちゃになっている。
法林氏:NTTの光回線がフレッツ光という名前になったときに、NTTがフレッツ網って作ったじゃないですか。今、NGNになった、ああいう広帯域のネットワークを丸ごと貸します、みたいなメニューを用意して、そこにみんながぶら下がる形を作るとか。その中で、nuro光みたいに、10GB借りられますみたいなプランを作ってみるとか、MVNOに対する売り方をMNOに工夫させた方が、MVNOとしては商売がしやすいんじゃないのかな。MVNOは、MNOがどういう回線の売り方ができるかということを、意外と知らない。携帯電話事業をやっている人だったら、ある程度、分かるかもしれないけど。
房野氏:IIJの人たちはよくご存知のような気がしますね。
法林氏:そういう人たちだと分かっていて、だからフルMVNOの話もあるんだと思うけど、そうじゃないところはなかなか難しい。フルMVNOも結局、相当な回線数がないとできないというし、億単位のお金がかかる。なので、MNO側の販売メニューを変えるとか増やすとかいうことをやらないと、構造的に変わらない。
房野氏:周波数にMVNO枠とかを作るのは難しいんですか?
法林氏:そうなると、その周波数帯しか使えなくなるということなので。逆にMVNOにとって損だと思います。全周波数を使えた方がいい。
房野氏:MNOがMVNOに対して提示する料金プランを、もっと柔軟にするべきということですね。
石野氏:ボリュームディスカウントができるとかね。100万回線使うから、もっと接続料を下げろとか。
法林氏:何かプラス要素を入れない限り、値段は下げようがない。ウチは回線数が多いから安いプランを契約できる、みたいなこともできるだろうけど、今、そういうのが見えてこない。また、ボリュームが増えない。総務省の人が全員MVNOを契約するとか、総務省の回線はMVNOが持ち回りで受けるとか、学校にMVNOを入れるとか、そういうことをしないで四の五の言うんじゃないって感じ。
石野氏:僕は傍聴できなかったんですけど、ひとつ、ちゃんとやっておくべきだと思ったのが、プラスワン・マーケティング(FREETEL)のこと。MVNOがなくなったときにユーザーの移行をどうスムーズにするか。
法林氏:絶対必要だよね。MVNOを増やすのも必要だけど、救命ボートも必要。そういう議論が、総務省が何年も業界をひっかき回して行く中で、一度も出てきていない。いかにユーザーのことを見ていないのかがよく分かる。
石川氏:過去にやったことを、もっと振り返ってほしい。MVNOのユーザー保護も考えなきゃいけないだろうし、1GBプランを導入したことによって、それがどれだけ選ばれたのかは検証する必要があるだろうし、端末の割引がなくなって本当に良かったのかも、反省した上で次を見てほしい。そうしないと同じことの繰り返しになるので、そこはやってほしいとすごく思います。あの会議には構成員しか見られない、公開されていない資料もいくつかあるんです。あれもできれば公開してほしい。ちなみに、韓国も一度、端末奨励金がなくなったけど、復活したんですよね。
法林氏:したした。
石川氏:政権が変わって復活したんですよね。そういうこともあるので。
法林氏:あれは若干、ロビー活動って話もあるけど、まあでも、事実だよね。販売奨励金を止めたがために、最初はドタバタするし、それによる歪みも出るので。日本は今、いろんな買い方やプランが出てきたので、少しバランスがとれてきたかなと思うところではある。万が一、FREETELみたいなことになったMVNOが出たときに、救済する方法を作っておくのは大事だと思う。サブブランドの件は、何かしらの策は講じるとしても、今回の話はあまりに些末な話ばかり。学者さんは、全体像を俯瞰できるほど頭が良いんじゃないんですかと言いたいですね。
……続く!
次回は、ラスベガスで行われた「CES」ついて話合います。ご期待ください。
法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。
石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。
石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。
房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。