総務省統計局が近年実施した社会生活基本調査によると、日本人の1日当たりの通勤時間は平均して74分(往復)となっている。都道府県別に見ると、通勤時間が長いのは、神奈川県が100分、埼玉・千葉県が94分、東京都が90分、奈良県が88分、兵庫県が80分…と、東京と大阪のベッドタウンが全国平均を大きく引っ張っているのがわかる。
われわれ日本人の多くは、「長時間通勤は、世界でも日本の大都市圏くらいの特殊なもの」と、なんとなく思っているかもしれない。しかし、これは先進国の大都市に共通するグローバルなトレンドである。今回は、長時間の通勤が社会問題となっている英米の事例を引きあいにして、とりわけ長時間の「痛勤」をしている人は、これとどう折り合いをつけているかを紹介したい。
米国全体でみた平均の通勤時間は往復で約50分だが、ニューヨークシティやワシントンD.C.といった大都市になると、60分を超える。イギリスも同程度だが、最も多忙な40代のビジネスマンに絞ると70分に及んで、日本の全体平均に並ぶ。さらにロンドンへの通勤者に限ると80分になって、東京・大阪通勤者といい勝負になる。そしていずれの都市でも、年々少しずつ通勤時間は増している。もちろんこれは平均時間なので、皆がそれだけの時間をつり革につかまって過ごしているわけではない。調査対象者には自宅勤務で通勤0分の人もいれば、逆に郊外から都心部に往復2時間かける人もいる。ならすと50分とか70分になるわけだ。
イギリスでは9%、米国では4%のワーカーは、往復3時間以上もの時間を通勤に割いている。彼らは「エクストリーム通勤者」と呼ばれている。そして、その上をゆく「超エクストリーム通勤者」ともいうべき人々もいる。彼らは毎日5~6時間を通勤時間に捧げている。