■米国のビジネスパーソンには、ワークライフ・バランスはない!?
「米国は、ワークライフ・バランスの元祖。日本も見習うべき」だと思っていたら、大間違い。米国の多くのビジネスパーソン(特に若手)には、ワークライフ・バランスという考えはないという。岩瀬氏によれば—
「米国の若いビジネスパーソンには、経営学修士(MBA)取得のため夜間大学へ通っている人が多いです。昼間は会社で働き、夜は勉強に打ち込む。すべての時間を仕事や勉強にあてているのです」
それでもプライベートな時間は確保し、思い切り趣味を楽しんでいるのではと思うが、そういう人も実は少数派とか。
「できる米国人と、オフの趣味について語り合ったことは、一度もありません。彼らにとって、ライフとワークは分けられるものではないのです。仕事が楽しければ、それでいい。『仕事とは別に趣味をもたなきゃダメ』なんて発想が存在しません。つまり、ワークライフ・インテグレーションが、できる米国人の働き方です」
■米国はテレワーク先進国ではなかった
日本では総務省が推進し、大手企業を中心に導入が進められているテレワーク。モバイル・IT機器を活用して、在宅あるいは外出先での仕事を容易にするもので、米国がテレワーク先進国かと思っていたら…
「私はかつて、全米最大の通信会社AT&Tに勤めていましたが、在宅勤務の制度はすでに20年前からありました。ところが、ほとんどの人がやっていないのです。最初のうちは試しても、かなり多くの人がやめていました。その理由として第一に挙げられるのが、子供です。小さな子供がいると、騒いだりいたずらしてきたりで仕事に集中できません。結局、オフィスで仕事をしたほうがはかどるので、在宅勤務の意義が乏しいのです」
ただし、米国の企業社会では、子供が急病や学校の行事などの都合で、オフィスを出ることに寛容だという。これは、私用外出がしにくい風土の日本企業が、積極的に学ぶべき点だろう。
■米国のビジネスパーソンは個人主義でもなかった
「日本人は和の精神で協調しながら仕事を進める。対して米国人は個人主義的で愛社精神に乏しい」といった相違が日米間にあると、漠然と信じられている。が、岩瀬氏は「まったく逆では」と思えるシーンの方が多かったという。
「できるアメリカ人の上司は、部下の面倒を本当によく見ます。部下はその上司に対して、強い忠誠心をもっています。組織自体への忠誠心は日本人ほどではないかもしれませんが、上司・部下の関係は、まるで日本の戦国時代の武将と配下の兵の関係を見るようです」