若者のクルマ離れが叫ばれる中、日本国内ではフェラーリ、マクラーレン、ポルシェといった2000万円を超えるスポーツカーが売れている。その流れに対抗すべく昨年から今年にかけて、国内メーカーからも久しぶりにスーパースポーツといわれる超高級車が登場した。今回は、その頂点に君臨する2台を比較試乗した。
◎ホンダとレクサスが本格的なスポーツカーを投入した理由
その国の自動車文化の〝深さ〟を測る基準のひとつに、スポーツカーやモータースポーツがある。いずれもクルマが持つ大切な要素〝実用性〟とは対極にあるものだ。メーカーにしてみれば販売台数は期待できないし、当然開発コストはかさむ。大衆車から高級車まで幅広い車種を製造するメーカーにとっては〝お荷物〟になりかねない。
だが、クルマの歴史をたどると、スポーツカーが果たしてきた役割は大きい。だからこそ自動車文化を大切にするメーカーはスポーツカーを造り続けている。しかし、こういう姿勢を持ち続けているメーカーは世界を見ても少なく、ドイツのプレミアムブランド御三家(メルセデス、BMW、アウディ)を除けばGMぐらいだろう。
一方、日本では日産、マツダがスポーツカーを造り続けているが、ホンダとレクサスが久しぶりに、高級スポーツカーの新モデルを投入した。ホンダは26年ぶりに『NSX』を、レクサスは2010年に発売した『LFA』に続く『LC500h』『LC500』を投入。両車とも日本車らしい技術を搭載し独自の進化を遂げたモデルで、今回、試乗した2台のパワーユニットのエンジン部分はどちらもV型6気筒3.5Lだ。
『NSX』のV6エンジンはツインターボで、ミッドシップで後輪を駆動する。フロントにはモーターを2基備え、左右の前輪を駆動し、ミッドシップのエンジンにもモーターを1基直結している。エンジンとモーターによる4WDの走りは、ほかのミッドシップスポーツカーとは異次元のハンドリングが楽しめる。特に、カーブの多い山間路ではハンドルを切った方向に、鋭く、力強く向かっていくのが特徴。誰がハンドルを握っても、スポーツカーの走りを楽しめるクルマだ。一方の『LC500h』は3.5Lガソリン+1モーターのハイブリッドモデル。両者を比べると、さすがに出力、トルクと車重の違いは、駆動性能にも表われているが、それでも『LC500h』は0→100km/hを5秒台、『NSX』は4秒台で走る。
ちなみに『NSX』は米オハイオの専用工場、『LC500h』は豊田市の元町工場で、それぞれの会社の匠たちによる手づくりに近い形で生産されている。個性は全く異なるが、職人たちの情熱はたっぷり詰まっている。