■連載/あるあるビジネス処方箋
直属上司である課長、部長、本部長、執行役員から、「会社を辞めろ!」と言われたら、あなたはどうするか?社長や役員からこの言葉を言われるのと、課長、部長、本部長、執行役員クラスから言われるのは、意味が違う。
今回は、そのあたりを踏まえ、部下としての対処法を考えたい。私のリストラや労使紛争の取材経験をもとにした考えであることをあらかじめ述べておく。何かのときにご参考にしていただきたい。
■課長、部長、本部長、執行役員クラスに権限はない
課長、部長、本部長、執行役員クラスならば、「辞めろ!」と口にすることはできたとしても、通常は「正社員を解雇にする」権限は与えられていない。これは中小、ベンチャー、大企業におおむね言えることである。
解雇は、管理職の思いつきや感情ではできない。解雇は会社の側から労働契約を一方的に解消することを意味するのだから、最悪の場合、労使紛争になること、もある。労政事務所のような公的な機関、労働組合、弁護士などとの争いになる場合は少なくない。
その争いに耐えるだけの証拠を、課長、部長、本部長、執行役員クラスがもっている可能性は低い。「証拠」と言っても、法の争いの場では証拠とは言えないようなものが多いはずだ。
たとえば、「能力が低い」という評価だけは、争いに耐えるだけの「証拠」とは言い難い。上司がその社員にした注意指導などが大量にないといけない。口頭による指導だけでは、弱い。始末書のような物的証拠が必要になる。しかも、複数枚はないと説得力がない。複数の社員の説得力のある証言も求められる。そのほかにも、仕事の大きなミスがいくつもないといけない。「大きい」というのは「致命的」と言えるものであり、課長、部長、本部長、執行役員の思い込みではダメなのだ。もちろん、ねつ造は論外だ。
これらをひととおりそろえて、争いに耐えられる「証拠」と言える。言い換えると、課長、部長、本部長、執行役員が、部下に対し、「辞めろ!」と口にするのはやはり、無理がある。社長や役員にならないと、本来は口にできないほどに、きわどい言葉なのだ。社長や役員であっても、軽率に口にする言葉ではない。
課長、部長、本部長、執行役員クラス通常は法律上、労働者であり、事業主とは言い難い。意にそぐわない部下がいる場合、課長、部長、本部長、執行役員クラスに与えられている権限は人事評価を低くつけたり、他部署へ異動をさせることぐらいしかない。辞めさせたい部下がいるならば、まずは自らが役員や社長になることが先決だ。