■これが「Gの部屋」だ!
そこで他にも専用の「ゴキブリ部屋」があるというので、恐る恐る見せてもらった。
「8畳ほどのスペースで約60万匹のワモンを飼育しています。水や餌をあげたり、試験用に外へ持ち出したりするために、1週間に数回は出入りしています。踏んでしまわないようにほうきで掃きながら中に入ります。また、逃げだすのを防ぐため、ドア付近に『ごきぶりホイホイ』を置いはいますが、部屋が快適なのであまり逃げません(笑)」
白いものはカップに入れた水容器。これで水を与えているのは、ゴキブリが溺れないように配慮したため。
■研究の成果で虫嫌いを克服?!
ゴキブリは恐竜より以前から地球に生息していただけあって、その生命力もかなりのもの。温かいところが好きで、20℃以下になると繁殖できないのは、この研究所ではチャバネゴキブリだけ。それゆえ、電子機器などに潜り込み、ショートさせるため電機メーカーにとっては悩みの種になっているとも。
「目は見えてますが人間の視力に置き換えると0.1以下なので、長い触角を頼りに動いて、よくグルーミングしています。叩こうとすると逃げるのは、お尻にハの字状にある尾毛で風を感じているから。それらを切除すると途端に動きが鈍くなります。オスは翅の下に甘露という甘い蜜を出す器官があり、メスになめさせて隙を狙い交尾しますが、見えてないせいか、時々オスがなめている時もあります(笑)」
また、集合フェロモンを出してるため臭いが強く、それも種類によって違いがあるそうだ。「実は私、ワモンとチャバネとクロの臭いをかぎ分けられる特技を持っていて、場所によっては近くを通るだけで『ああ、クロがいるな』とわかります」
そんな有吉課長は、もともと大の虫嫌いだったそうだ。「こればかりはもう慣れですね。展示用にGの拡大写真を撮影することがありますが、どうやって可愛く見せようか、といったことばかり考えるようになりました」
こうした有吉課長の努力により、飼育室を訪れた子どもから「ゴキブリの生態がわかって、怖くなくなった」とお礼を言われることもあるそうだ。そしてもちろん、この飼育がゴキブリの恐怖に対抗できる同社の製品開発に活かされているのは間違いない。
次回は、3階の効力試験エリアに潜入し、どのような製品試験が行われているかなどを紹介する。
取材・文/野々下裕子