■こんな会社に残るのも、1つの生き方
しかし、まんざら、悪いところばかりではない。このような会社は、のどかで平和だ。激しく叱る人はいない。燃えるようなタイプもいない。厳しいノルマもない。少なくとも、私は噂でも聞かない。同世代の大企業の特に金融機関の社員と比べると、毎月の賃金はおそらく、20~40万円は少ないだろう。賞与を入れると、年収では300~500万円は少なくなるかもしれない。
それでも、のどかで刺激のない日々を求めるならば、いいかもしれない。30代半ば以上になり、人生をある意味であきらめる場合(放棄するのではなく、現状に満足するという意味)は、こんな会社に残るのも、1つの生き方だ。お金の支払いが遅れようとも、「説明らしき」ことをして、ずるずると延ばせばいい。本来は、法律上や倫理的にもあってはならないのだが、社内では大きな問題にはならない。だからこそ、繰り返すのだ。
最後に・・。20~30代前半の社員がこういう会社を辞めるのは、長い目で見ると、賢明な判断だと思う。一時期は収入減になるのかもしれないが、5~10年以内に取り戻すことができるはずだ。私のような外部スタッフが離れていくのも、正しい考えではあるのだろう。
しかし、双方と振り返る必要がある。通常、一定のレベル以上の人は正社員にしろ、外部スタッフにしろ、このタイプの会社とは深くは関わらない。こういう会社と関係を持たなければいけないのは、つまりは、非力だからだ。あふれんばかりの才能や潜在的な能力、ゆるぎないキャリアや実績があるならば、視界に決して入らない会社なのだ。また、入れるべきではない。
なぜ、こんな会社と関わったのかと自問自答をしてみたい。私も、よく考えることなのだ。もしかすると、一定のレベル以下なのだろうか・・・。読者諸氏にお教えいただきたい。
文/吉田典史
ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。近著に「会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ」(KADOKAWA/中経出版)。
■連載/あるあるビジネス処方箋