■連載/あるあるビジネス処方箋
前回、30代で職場で総スカンになる人を紹介した。この人たちは実は、大変な努力家である。
私の観察では、ほかの社員よりも仕事への姿勢がいい。仕事の量も多い。仕事の精度も高い。だが、浮いた存在であり、皆からは嫌われている。なかなか、人事評価は高くはならない。すると、一段と努力をする。そして、ますます嫌われ者になる。なぜ、こういう努力家が認められないのか。
今回は、その理由を私の取材経験をもとに考えたい。
■ますます孤立する
会社員は、大学やシンクタンクなどの研究者やフリーのライター、作家、デザイナー、カメラマンなどではない。会社の創業経営者でもない。あくまで会社という組織の中でチームの一員として仕事をしていくことが強く求められている。「成果主義」や「実力主義」といったところで、まずは組織人としての仕事の成果や実績が重視される。このあたりのことを正しく心得ていないと、ひとりで黙々と努力し、泥沼化する場合がある。
たとえば、上司や先輩から仕事のミスについて厳しく指摘されると、自分の殻に閉じ込める人がいる。特に30代前半までに目立つ。そして、ひとりで黙々と仕事をする。上司に報告・連絡・相談などを怠る。周囲の社員との関係づくりにも関心をもたなくなる。
会社員をする以上、上司や周囲との良好な関係をつくっていかないと、大きな成果や実績は残せないようになっている。この現実を受け入れることをかたくなに拒む。それどころか、研究者や作家、創業経営者などのインタビュー記事や本などを読んで、「実力があれば、生きていくことができる」という言葉などに真剣に感化されている。自分が会社員であることを忘れ、研究者や作家、創業経営者などと同じ世界にいると思い込む。そしてひとりで懸命に努力するから、ますます孤立し、浮いた存在になる。
■悪い印象を与える
ビジネスでは、特に印象が大切だ。「あの社員はこういう仕事ができるから、任せてみよう」と、まずはイメージで判断される。そのうえで、それにふさわしい仕事が与えられる。たとえば、「あの人は上司や周囲の社員と協調することなく、ひとりで仕事をする」という印象を与えていると、上司や周囲からの支援はしだいになくなる。他部署の人も、そのように見る。社内では完全に孤立し、いるかいないか、わからない存在になる。それでもなおもひとりでがんばると、いよいよ、皆の意識から消えていく。