■連載/あるあるビジネス処方箋
最近、私はものすごくへこんだ。今も落ち込んでいる。中堅出版社に勤務する50代半ばの男性の編集者と、大きな仕事をしたときだった。編集者は仕事をはじめ、勤務する社内の事情や人事制度、人間関係など、あらゆることについて否定する。「それは違う」「もう、ダメだ」「そんなの、無理に決まっている」…。聞いているこちらが、滅入るほどだった。
こういう人は時折、現れる。私の会社員の頃を振り返ると、数人の管理職がいた。取材先の会社の広報や人事の担当者にもいる。明確な理由もなく、次々と否定するこのタイプの社員について、今回は考えたい。どうか、くれぐれも見習わないでほしい。あなたが、損をするだけなのだ。
■否定しながらも、自分の身は守る
「それは無理だ」「あんなことはできない」…。50代の編集者の男性は、こういう言葉を10~15秒ごとに繰り返す。わずか数分で、15~20回も口にする。それが、事実ならばともかく、思い込みや思いつきで話しているように聞こえる。こちらからすると、話を前に進めることができない。何か、自分が失礼なことを言ったのだろうかと自問するほどに不可解な思いになる。結局、話したうちの半分が、何かを否定する内容になる。「あれはできない」「あんなことをしているようでは…」。最後は、自分の上司や会社の批判をし始める。こちらは、暗い気分になり、話すのがおっくうになる。
なぜ、私はへこんだ気分になったのか。その男性の本音が見えるからだ。男性は、自分の仕事のことはそれなりに消化しようとしている。ところが、他人のことになると、「あれはできない」「それは無理」と言い始める。しかも、その「できない」「無理」という理由や根拠があいまいで、きちんと調べたものではないこともわかる。私以外の、例えば、同僚たちにも「それはできない」「やめたほうがいい」と話す。自分のことになると、一転して愚痴をこぼしながらも、前に進めようとする。このあたりに、私は理解ができないものを感じたのだ。
■否定することが、癖
男性は、10年ほど前も否定を繰り返していた。同僚を指して「あいつは、40歳をこえても管理職になれない」「うちの会社では無理…」と口にする。当時は、知り合って間がないこともあり、私は黙って話を聞いていた。それから10年の間に、1年に1度くらいのペースで会う。仕事上、会わざるを得なかった。男性はその都度、何かを否定する。否定する対象にも問題はあるのかもしれない。否定されても、仕方がない面があるのかもしれない。だが、いかんせん、ここまで否定を繰り返す人はもう、否定をするというのが癖になっているはずだ。
読者の職場に、こういう男性はいないだろうか。ここまでひどいケースは少ないとしても、部下のことをほめることはしないが、ミスを指摘し続ける上司はいるのではないだろうか。「自分はダメだ」などと責めないほうがいい。こういう上司は、機会あるごとに何かを否定するという癖である可能性が高い。あなたは、そこまで考慮したうえで接するべきなのだ。経験の浅い会社員は、上司が部下である自分のことを真剣に思い、否定してくれていると信じ込むことがある。その捉え方は、あなたが損をするだけだ。