碓氷峠を駆け巡った国鉄時代の名電気機関車「EF63」。その運転席に同乗できるというので、勇躍、横川駅のすぐ横にある「碓氷峠鉄道文化むら」に行き、「EF63運転体験」してみた!
■ブルートレイン好きだった子供の頃からの夢がかなう
筆者は「ブルトレブーム」まっただなか世代だ。小学生の頃、寝台特急「富士」や「はやぶさ」などを、横浜駅のホーム(JRではなく、まだ国鉄だった)から撮影したものだ。どうしても寝台列車に乗りたくて、祖父母宅までの道中、わざわざ急行「銀河」に乗って、20系の三段式寝台の最上階で揺られながら大阪駅まで行ったことも懐かしい。
当時の銀河はEF65形1000番台が牽引しており、青い電気機関車と青い客車の編成が美しかった。もちろん、電気機関車の運転なんて夢のまた夢だった。走行中に自分が運転席に乗るなんて…想像すらできなかった。
それから30年ほどが経ち、EF63の運転体験に同乗する機会ができた。男子の夢がかなう瞬間がやってきたのだ。
■「ロクサン」にはアナログ機器の魅力が詰まっている!
碓氷峠は信越本線の横川駅から軽井沢駅間にあり、最大勾配66.7‰(パーミル)の急傾斜だ。そのため、往時は線路の間にラックレールを敷き、機関車側の歯車と噛み合わせる「アプト式」が採用されていた。
そのため横川〜軽井沢駅間に約50分ほどもかかり、高速化の妨げになっていた。これに替わり通常の線路と車輪だけで進む「粘着方式」にするため、補機として開発されたのがEF63形だ。
ロクサンの愛称で親しまれるこの車両は昭和37年(1962年)に試作され、勾配抑速のための発電ブレーキや列車の暴走ほ防ぐための過速度検出装置、非常用の電磁吸着ブレーキなどの安全装置を搭載していた。
EF62形電気機関車や169系、189系、489系電車と協調運転ができ、連結する軽井沢方には多くの電気連結器(ジャンパー線)を備える。キハ82用のジャンパー線も用意されていて、思わず涙しそうになる。
全長が約18m、自重108tの大柄なロクサンは総勢25両が建造され、全機が横川機関区(現在、跡地が碓氷峠鉄道文化むらに活用されている)に配備、通常は2両連結する重連運転、時には4重連で走行していた。
しかし、平成9年(1997年)長野新幹線(現北陸新幹線)の開業に伴い同区間が廃止され、ロクサンもその役目を終えることになった。
1号機の建造から55年も経つオールドトレインは、静かに余生を過ごしていたが、平成11年(1999年)に碓氷峠鉄道文化むらが開園し、信越本線の廃線跡を利用した運転体験業務に復帰。現在まで走り続けてきたのだ。