〈原因と対策〉「ピント調節機能」が著しく衰退。メガネを作り直しても解決せず
●老眼のメカニズム
人が近くを見る時、毛様体筋が緊張するため水晶体が膨らむ。逆に、遠くを見る時は毛様体筋が弛緩し、水晶体は薄くなる。老眼によって近くが見えにくくなるのは、加齢に伴い水晶体の柔軟性がなくなり、硬くなってしまうから。また、水晶体の厚みを調節する毛様体筋も衰えてしまうので、ますますピントが合いづらくなる。
■ピント調節機能が衰え、水晶体が凝り固まる
老眼になると近くが見えにくくなる理由は2つある。水晶体の厚みを調整する筋肉・毛様体筋が弱くなるためと、水晶体自体が柔軟性を失って膨らみにくくなるため。ともに加齢によるピント調節機能の衰えだ。
「人間の目は、本来遠くが見やすく、近くを見ると疲れやすい構造。スマホはPCよりさらに至近距離でつい長時間凝視してしまうため、眼精疲労を起こしやすい。老眼のようにピント調節機能が働かなくなってしまうのです」(前出・石岡医師)
疲れ度合いによって、視力が安定しないのもスマホ老眼の特徴だ。PC作業の多い人を対象に行なった調査(下グラフ参照)では、たった1日でも夕方にはピント調節機能が衰え、週末の金曜日にはかなり低下していることがわかる。こうなると、何回メガネを作り直してもしっくりこない。また、石岡医師はまばたきの重要性も指摘する。
「人は無意識に1分間で約20回まばたきをしていますが、画面に見入っている人は5回ほど、と極端に少ない。ドライアイも目の老化を促進させますから、まばたきで目に潤いを運ぶのは有効な予防になります」
スマホ老眼はちょっとした日常の習慣で予防できる。長時間のスマホ利用が避けられない人も、左ページを参考にして、上手に目を休めてほしい。
●ピント調節力の変化
長時間のPC作業者16名によるピント調節機能を調査。月曜日の夕方にはピント調節力が下がり、週末にかけてさらに低下している(月曜日作業前の値を100として)。出典:花王と鶴見大学歯学部眼科学講座(後藤英樹先生)