■連載/あるあるビジネス処方箋
20代の会社員の中に、目の前の仕事だけを必死にしている人がいる。それ以外にもたくさんの仕事が部署にはあるはずなのだが、そのことに気がつかない。知ろうともしない。プロ意識ともいえるのかもしれないが、こういう姿勢では、やがてゆきづまるはずだ。今回は、1つの仕事だけしかできない、しようとしない20代社員の特徴を、私がこれまでに取材で知り得たことをもとに紹介しよう。
■「しがみついている」とは思っていない
本人は、「1つの仕事にしがみついている」と思っていない可能性が高い。きっと真剣にその仕事に向かい合っているはずなのだ。上司からも指示を受けているし、先輩たちも何も言わない。「だから、これでいいんだ」と思い込む。
ところが、実は上司が「まだ、経験が浅いから、言っても仕方がない」とあきらめていることや、先輩たちもそれにあわせていることに気がついていない。本当は、部署全体の業務をスピーディーに処理するためには、ほかの仕事もしてもらいたいのだ。だが、それを言ったところで、20代である今は経験も浅く、そこまで余裕がない。そんな配慮があることを考えていない。
■仕事の全体像が見えていない
部署や上司をはじめ、それぞれの部員の仕事やその難易度、進捗、状況などが正確にはわかっていない。「わかった」と思っても、表層的なとらえ方でしかない。それでも、本人は「わかっている」と信じ込み、前の前の仕事を手離さない。ひたすら、それだけをしている。そのことが、部署全体にとっていかにマイナスであるか、と思いをめぐらすことをしない。そのことを先輩などから指摘されると、逆恨みをすることもある。取引先から何かを言われると、激しく怒ることすらある。
結局、皆から「こんな20代にかまっていられない」と思われ、浮いた存在になる。そのことに気がつかずに、相変わらず目の前の仕事に全力を注ぐ。もはや、誰もが何も言えない空間になっている。こうして30歳ぐらいになると、「扱いずらい」という評判や噂が職場に蔓延している。
■妙なプロ意識をもつ
その仕事だけをひたすらしているから、その仕事に限っていえば、ノウハウや情報などを持つ。すると、一段と勘違いをする。「自分はそこそこの仕事をして、高い評価を受けている」と真剣に信じ込む。しだいに発言や行動が、横柄になる。30代や40代をバカにするようにもなる。「ほかの20代の社員と自分は違う」とも錯覚し始める。
視野が極端に狭いから、ほかの社員にしわ寄せがいっていることや、部署全体のことを考えることはまずしない。それどころか、わずかながらの経験で、上司や先輩のことを「あの人は要領を得ていない」と逆評価までする。ときには、「マネジメントができていない」とまで発言してしまう。実は、前途多難な社員になっていることに気がつかない。