■人材の新陳代謝が進んでいる
大企業は、人事異動や配置転換が頻繁にある。少なくとも年に1回は、定期異動のある会社が多い。しかも、全国や海外を含めた大規模なものになる。グループ会社への出向や転籍も増えている。リストラも、大規模になる。一方で、新卒も中途採用も、大規模に行われる。人材の新陳代謝が進んでいる。嫌な上司や先輩、同僚らがほかの部署へ行ったり、辞めたりする可能性が中小企業よりは高い。
中小企業は、人事異動や配置転換が少ない。出向や転籍はほとんどない。社員の定着率が低いから、30代半ばまでくらいの社員は辞めていくかもしれない。40~50代の嫌な上司などは、なかなか辞めない。組織の新陳代謝が進まないから、意識の高い人には物足りない職場になりやすい。
■強い組織
人材の新陳代謝が大規模に進むことは、組織が生き物のように動き、しだいに体質や社風などが変わっていくことを意味する。一時期の混乱もあるかもしれないが、3~5年という期間で見ると、組織そのものが強くなっていく。大企業が中小企業よりもはるかに、会社の寿命が長い理由の1つはここにある。
優秀な人材は、強い組織の中から生まれてくる傾向がある。中小企業から優秀な人がなかなか生まれないのは、人材の新陳代謝が進まず、組織が一向に変わらないからだ。
大企業で働く社員を「寄らば大樹の陰」で、「会社にしがみついている」ととらえるのは、実態に即していないのかもしれない。なぜ、いつの時代も多くの人が大企業に魅力を感じるのか。実は「安定」や「将来性」などではなく、「社員や組織のレベルが高い」ことに、社員たちが大きな満足をしているからではないだろうか。
文/吉田典史
ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。近著に「会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ」(KADOKAWA/中経出版)。
■連載/あるあるビジネス処方箋