■連載/あるあるビジネス処方箋
職場で嘘をつきまくる人がいないだろうか。周りからすると明らかに嘘なのに、本人は真剣に、堂々と語る。もはや、事実か、嘘か、その区別すらできていない。こんな人と仲良くしていくことも、会社員の大切な仕事だ。私の取引先や取材先にもいる。その観察を通じて、この人たちの特徴を紹介しよう。良好な関係をつくるための参考にしてほしい。
■自己保身
嘘を繰り返す人は、たとえば、取引先に、「当社で、この商品はAという問題を抱えている、といった声がある。だから、Aの部分を直してほしい」とメールで伝える。電話で話さないのは、実は嘘であるからだ。社内では、「Aに問題がある」「Aを直せ」と、誰も言っていない。だからこそ、部内の同僚らに聞かれると、まずいので、メールしか使わない。
「この商品は、Aという問題を抱えている」と指摘するのには、こんな思惑がある。
「上司をはじめ、ほかの社員らの意見であり、自分の考えではない。だが、上司の指示もあるので、御社にAの部分を直してほしいと伝えている。どうか、自分を悪く思わないでほしい」。
つまりは、嘘をついての自己保身である。
■嘘をつくことに使命感
本来は、「私は御社の商品のAのところに、問題があると思う。だから、こんな具合に直してほしい」と言うべきだ。これをそのまま取引先に言うと、摩擦が起きたり、トラブルになる可能性がある。そこで、「社内で、Aに問題があるという声がある」という嘘をついて取引先に伝える。自分は悪者になりたくないし、うらまれたくないのだ。
嘘を取引先に見破られたくないがために、何度も嘘をつく。嘘に加工をして、一段と大きな嘘とする。もはや、妄想となっている。自分でも、どこまでもが事実で、どこからが嘘であるかを把握できていない。嘘をつくことが「仕事」になっていて、妄想にすることに「使命感」すらもっている。
■上司などの思惑を探る
嘘をつきまくる人は、上司や社員らの表情や反応を観察して、その様子を先回りし、今後、どうなるのかと察知している。「Aのままでは、社内では悪い評判になる。だから、あらかじめ、Aを直しておこう」と。だが、それは思い込みでしかない。
本来、会社員である以上、上司と話し合い、会社としての意見として取引先に伝えるべきである。ところが、上司と話し合うと、悪く思われたり、低く扱われたりすると察知し、あえて上司と話すことをしない。ここでも、「上司と話し合った結果の意見」という嘘をつく。