■冷却水ゼロのマシンを表彰台に立たせる驚異の性能
フリクションロスとは、摩擦抵抗によりエンジンパワーを食われてしまうことだ。バイクには動く部品、いわゆるムービングパーツが多用されている。ムービングパーツは単独で動くことはなく、必ず別のパーツと噛み合っていたり、擦れ合っていたりする。そういった部分の摩擦抵抗によって、今や貴重なエンジンパワーを損失してしまうのだ。
約20名が参加した「青木宣篤・テクニカルパドックツアー」。ツインリンクもてぎのモチュール・ブースでは、摩擦抵抗低減の一策であるモチュール製エンジンオイルが紹介された。「自分のバイク──ハヤブサにモチュール300Vを入れて、分かったことがあるんです」と青木さん。「僕は今までいろんなオイルを使ってきました。パワーを出してくれるオイル。ミッションのタッチがいいオイル。ピストンの動きがいいオイル。オイルにはいろいろあるけれど、結局どのオイルもモチュールをめざしてるんだな、と」
モチュール『300v FACTORY LINE ROAD RACING 15W50』4ストロークエンジン・バイク用。100%化学合成。1L(参考実勢価格2650円前後〜)
植物油脂から100%化学合成された「エステル」をベースとしているモチュール300Vは、鉱物油ベースのオイルとは組成からしてまったく異なる。低粘度(言葉通り、粘りけが少ないこと)でありながら、潤滑性、耐摩耗性、ギア保護性能が高く、エンジンオイルとしては理想的な性能を発揮する。馬力向上まで見込めるというから、厳しい足かせをはめられているMotoGPには持ってこいだ。そして、青木さんが開発ライダーを務めるスズキのMotoGPマシンGSX-RRや、ヤマハ・テック3が走らせるYZR-M1には、モチュールのエンジンオイル300Vが使われている(「各チームによりブレンドなどは独自」とのこと)。
青木さんがこんな裏話を聞かせてくれた。「スズキのマーベリック・ビニャーレス選手が3位表彰台に立ったフランスグランプリですが、実は先行車の跳ね石でラジエターに穴が空いていた。残り10周で冷却水は空っぽ……。想像するだけでも恐ろしいことですよね。それでも最後までしっかり保ったのは、モチュールのオイルのおかげ」。
摩擦抵抗を減らすために低粘度でありながら、冷却水なしでもレーシング走行を支えるほどの信頼性を発揮したモチュールのエンジンオイル。最新グランプリマシンの効率を支えるモチュール300Vは、レースのみならず、公道を走る市販バイク用としても一般に販売されている。
モチュールアジアパシフィックの新井活矢さんも、オイルの裏話を楽しく説明してくれた