■連載/あるあるビジネス処方箋
中途採用で入社してきた人の中には、「前の会社では、こうだった」「以前の職場では、こんなことをしていなかった」と語る人がいる。その都度、ひんしゅくを買ったり、反発をまねいていたりしていることにも気がついていないようだ。それでも、何度も前の会社のことを語る人は少なくない。今回は、中途採用者が前職を語ろうとする理由を私の取材経験をもとに考えたい。
■虚勢を張る
「俺はすごいんだぞ」「私は優秀なのよ」と、自分を大きく見せたいのだ。言い換えると、「あなたたちよりもはるかに仕事をわかっているし、きちんとできる」と言いたいのだろう。つまりは、自信のなさの表れといえる。
社長ならば、こんなことは言わないはずだ。言わずとも、ほとんどの社員が認めている。しかし、中途採用で入ってきて、実績に乏しい人は、前の会社のことをつい言いたくなるのだ。「俺をなめるな。認めてくれ!」といわば、皆を威嚇し、虚勢を張っているのだ。
■優劣がはっきりとはわからない
日本の多くの企業は、仕事をハイレベルにできる人が高いポジションにつくとは言い切れない。大企業などでは同世代の中で抜群に優秀であっても、役員になることなく、部長で定年を迎える人は多数いる。そんな不満が蔓延している。中途採用で入ってきた人は当初は何かを期待していたのだろうが、それが裏切られたと思っている可能性がある。
これは取材のとき、中途採用で入社した人からよく耳にすることでもある。「結局、この会社でも認められない」という不満だ。やり場のない不満や怒りがあるからこそ、前職のことを語り、自分が優秀であることを認めさせようとする、とも考えられる。
■今の職場はたしかに問題が多い
中途採用で入ってきた人からすると、たしかに問題が多く見えるのだろう。前職の仕事の進め方と比べると、明らかにムダであり、ムリがあるのかもしれない。時間がかかり、コストが高くなることをしているのかもしれない。
だが、前々からそこにいる人は、今の進め方が正しいと思い込んでいる傾向がある。新参者である人に、何かを言われたくないと思うことが多い。そこでつい、前の職場のことを持ち出し、「前はこうだった」と言いたくなるのだろう。こんなことを言えば、孤立しやすくなるものなのだが、そのことに気がついていない。