■「周囲の誰にでも、憧れを!」
いつもは経営者然とした湖中だが、彼には変わった趣味がある。社員と食事に行くこと――と言ってもただ事ではない。一緒に“バカ喰い”ができる社員と一緒に、とんでもない量を胃袋にたたき込むのだ。
「肉は1kg以上食べます。焼けるまでにほかのつまみを300~500グラムくらい食べ、そこから1kgのティーボーンステーキにかかります。ハンバーグはデザートですね(笑)」
なんと「ラーメンとカレーも1kgは食べる」という。
「いえ、正確に言うと1kg“ずつ”です。ラーメンは、1枚50gのチャーシューが8枚載ったチャーシュー麺を頼みます」
子どもっぽくて、ほほえましい。だが、彼にはやはり、経営者然とした“人付き合いの流儀”もあった。彼は「周囲の皆に、憧れを持つことです」と話す。
「誰にでも、スゴいところはあります。それを見つめ、認め「すごいなぁ」と感心するんです。すると芸能人でも作家でも、そっくり真似することはできなくとも、ある程度取り入れることができます。もちろん、仕事仲間も同じですよ」
例えば、コナカの技術顧問だ。彼は『DIFFERENCE』をプロデュースした佐藤可士和氏から「首回りが大きいとスーツが重く感じるからぴったりにしてほしい」「スーツが長持ちする縫製を」と無理難題を言われた。しかし、顧問は嫌な顔ひとつしない。
「その後、問題を解決するため机に向かっている彼を見たら、話しかけられないほど集中しているんです。集中している人は、美しい。私は『カッコイイ、私もこうでありたい』と思いました」
憧れを持つ人は伸びる、ということなのだろう。また、教育とは教え諭すことでなく「こうなりたい」と憧れを持たせることなのかもしれない。そんな話を振ると、湖中は照れたのか、冗談で返してきた。
「憧れると同時に『この人にならもっと無理難題が言えるな!』と思いましたよ(笑)」