■連載/あるあるビジネス処方箋
上司が部下を罵倒したり、怒鳴ったりするのが「いじめ」や「パワハラ」だとすると、今はここまでわかりやすいことをする人は少ない。むしろ、部下に仕事を教えているように見せながら、その部下のやる気をくじき、従わせようとする上司のほうが多い。得てして、このような人は出世する傾向がある。今回は、部下をいじる上司はなぜ、出世するのか、という謎を私の取材で得た情報をもとに考えたい。
■自分の力や威厳を見せるのが上手い
出世する上司は、反抗的な部下や自分よりも優秀な部下などをいじることで萎縮させ、コントロール下に置こうとする。露骨ないじめをすると、「パワハラ」と騒がれやすい。だから、「いじめ」とは思われないように演出する。たとえば、その部下の言動について揚げ足をとったりする。
報告を受ける時、「あなたの言っていることの意味がわからない。日本語で話してくれ…」などと皆に聞こえるように指摘する。本人がいないところでは、ため息をついて「あんな部下の面倒をみるのは、困るな」と演出する。「俺に逆らったら、こうなるのだ」と見せしめにしようとする。このようにして振る舞いながら、自分中心の体制をつくろうとする。
■組織の中で生きていく術を心得ている
部下をいじりながらも、「いじめ」はしない。その使い分けを出世する上司は心得えている。自分が損をすることはしないのだ。さらには、職場の空気や世論を察知したり、担当役員や社長の意向を素早く見抜く。そして、それにふさわしい行動をとる。つまり、部下をいじる上司は、会社員が組織の中で生きていく術を心得ている。一方で、「いじめ」を行ない、労働組合などに話をもっていかれる上司は、その意味ではわかっていない。
■嘘をついている自覚がない
部下をいじる上司は、反抗的な部下のことを誇張して、担当役員や社長に伝える。「自分には手に負えない」などと言い、同情してもらえるようにする。職場の問題も、都合のいいように加工して報告をする。管理職としてのマネジメント力が足りないとは、決して認めない。「反抗的な部下が、チームを乱す」、「協調性のない部下がいるから、和を乱される」とレトリックを使う。部下をいじる管理職は、嘘で塗り固めたことを口にしても、悪びれたものがない。むしろ、嘘をつくほどにエスカレートする。自分でも、どこまでが「事実」で、どこからが「フィクション」であるのか、わからなくなっている。