小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

【社長の横顔】西武鉄道代表取締役社長・若林 久さん

2016.08.07

■時には雨を、風を楽しめ

 大学卒業後、若林は「自然が好きだから」と西武グループの伊豆箱根鉄道へ入社。1年目、駒ヶ岳ロープウェイの改札を勤める彼を見て「将来、日本有数の私鉄を率いてV字回復に導く」と想像できる人はいなかったろう。

 いや、頭角を現す前は、むしろ蹉跌だらけの会社員生活だった。

「2年目、貸し切りバスの配車係になりました。修学旅行などバスを使う仕事をいただき、当社のバスや、足りない場合は他社のバスを手配する仕事です。会社の稼ぎ頭でしたが、だからこそ忙しく、皆がやりたがらない仕事でしたね(苦笑)。昔のことなので、仕事が深夜に及ぶこともしばしば。冷房もなかったので、暑い日は夜になると下着一枚で、旅行代理店やバス会社に電話をかけまくっていました」

神経を使う仕事でもあった。そして、ある時には大失敗をした。

「中学校の修学旅行でした。旅行会社の添乗員さんから『1時間待ってもバスが来ない。どうなっているんだ!』と電話がありました。一瞬、事態が飲み込めなかったのですが、調べると、集合場所がいつもの三島駅でなく、遠く離れた静岡駅だったんです。もちろん1円だってご請求できるわけがなく、学校からも、上司からも大目玉を喰らいました」

 もちろん落ち込んだ。だが彼は「会社に損させた分を取り返すぞ!」と仕事にのめり込み、顧客からの依頼に「無理と言った覚えがない」勢いでバスを手配し続けた。するといつしか「バスの配車係が天職だったんじゃないか、と思うほど仕事が楽しくなった」という。

 ところが31歳の時、彼は管理部門への異動を言い渡された。若林はお客様と向き合ってサービスができないことを味気なく思い、次第に落ち込み、毎日「営業に戻りたい」と思いながら働いていたという。

「すると、先輩が『若林、お前新しい仕事でイキイキがんばってるそうじゃないか!』と言うんです。きっと、私が落ち込んでいることを見透かしていたのでしょう。『営業と管理部門を両方経験させてもらえるなんて幸せ者だな!』とも言われました」

 この時、彼はちょっとした悟りを得た。自分が変えられるのは自分と、自分の考え方だけ。周囲で起きることは、雨や風のようなもの。天に向かって「なぜ雨を降らせるのか」と恨んでも仕方がない。ならば、弱音を吐いても仕方ないじゃないか。

「しかも、30年経ってようやくわかったことがあるんです。若い時の経験があるから、私、今でも現場の気持ちがよくわかるんですよ」

 だから“率先垂範”ができる。今、目の前にある仕事は、遠い将来の糧になる。だから、雨が降ったら雨を、風が吹いたなら風を、受け入れて楽しみ、ベストを尽くすしかない――。

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2024年11月15日(金) 発売

DIME最新号は「2024年ヒットの新法則!」、永尾柚乃、小田凱人、こっちのけんと他豪華インタビュー満載!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。