■そもそも上司がわかっていない
部下として最も困るのは、上司が部下の仕事のことを把握していないことだ。部下たちが丁寧にわかりやすく伝えても、「何を言っているのか、わからない」と答える。部下たちは、「えぇ〜!?」と密かに思う。例えば、営業系の部署に長くいた人が人事異動になり、広報部の課長になったとする。そうなると、部下になる側も大変だ。苦労することは間違いないだう。
謙虚に仕事を覚える人もいるが「俺は上司だ!」と言わんばかりに、圧力を加えてくる人も少なくない。「私はきちんと理解している」と言い切る人もいる。しまいには、部下に教えようとする。教える内容も教え方もめちゃくちゃなのだが、本人は自信満々。こうなると、お手上げだ。もはや、どうすることもできない。
こういう場合、「何を言っているのか、わからない」と上司に言われたら、「はぁ…」と答えておけばよい。踏み込んで説明しようとすると、得てして上司は不愉快になる。「常に自分は正しく、常に部下は未熟」だと思いたいのだろう。こういう上司の下ではいずれ、部署はゆきづまる。その時、態度を変えるかもしれないが、その可能性は低い。「常に自分は正しい」と信じ込んでいる人は、まず変わらない。部下なら深入りしないほうが安全だ。
「何を言っているのか、わからない!」という言葉は、本来、上司であろうとも使うべき言葉ではない。言いたくなる時もあるだろうが、部下もまた、心や感情を持っている。こんな言葉を口にしたところで、いい結果は生まれない。部下を抑えつけたり、潰したりすることで威信や権威を守ろうとすることは止めたほうがいい。
部下もそんな魂胆を見抜いている。管理職なら部下から慕われる上司になるべきではないだろうか。部下もそんな人を求めているはずだ。
文/吉田典史
ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。近著に「会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ」(KADOKAWA/中経出版)。
■連載/あるあるビジネス処方箋