生しょうゆとは搾り立てのしょうゆのこと。製造現場では昔から、美味しいしょうゆと言われているものである。
一般的なしょうゆとの違いは、火入れ(加熱殺菌)を行なっていないこと。そのため、常温だと微生物が発酵を続けてしまい、時間が経過するとともに品質が変化してしまう。冷蔵保管でないと品質を保てないことから、同社でも生しょうゆは、通販でしか取り扱ってこなかった。生しょうゆを常温流通させるには、空気に触れないようにして酸化を抑えるほか、火入れに代わって微生物を除去する新たな製造法を確立する必要もあった。
通常のしょうゆ(左)と生しょうゆ(右)。生しょうゆの見た目は、濃い色の通常のしょうゆと違い色鮮やか。さらりとしたうまさが特徴で、現代の感覚にマッチしたライトな感覚の味わいになっている
ただ、容器と中身ともに、同社がしょうゆで革新的なものを生み出そうとしていたのはなぜか? その背景にあったのは、しょうゆの使用量が減ってきていることがあった。
使用量が減ってきているのは、ライフスタイルの変化などによるもので、何も不満があるからではない。ユーザーを調査しても、「不満はない」と答えるのがほとんどだという。強いて不満を挙げれば、「液だれがする」「場所を取る」「注ぐときに出過ぎる」といったレベルであった。
だが、よく聞いてみると、「時間が経つと黒くなってくる」「美味しさが損なわれる気がする」といった声が拾えることもあった。これはつまり、多くのユーザーはしょうゆに「不満はない」のではなく、不満につながる変化に気づいていないということ。そこで同社は、拾えたこれらの声を解決し、しょうゆの付加価値を高めることにしたのである。
こうした背景の中で10年以上の時間をかけて開発した容器は、逆止弁と呼ばれるパーツが採用されているのが特徴だ。これにより、しょうゆは通すが空気は通さないようになり、使い終わったときに空気が一緒に戻らないようになっている。また、火入れをせずに生しょうゆをつくるための新たな製造法としては、特殊な膜で微生物を取り除く方法を開発。これらにより、常温で生しょうゆを流通、保管できることを可能にした。