日頃の疲れが取れず、「休日に出かけたいと思っているが、いつも結局、ゴロゴロして終わってしまう」、「運動不足を感じてジムに行こうと思うが足が向かない」などの状態に陥っていないだろうか。そんなイマドキの切実な疲労感にまつわる悩みの解決策と、食事での摂るべき栄養素を医師に聞いた。
何かをしたいがモチベーションが上がらずに過ぎていく・・・「低モチベ疲労感」が今ドキ
サントリーウエルネスが今年8~9月にかけて全国の40~50代男女1,000名を対象に行った疲労感に対する実態調査の結果、8割以上が6ヶ月以上もの期間、疲労感が継続していることがわかった。
疲労感への対策を行っている約4割の人においても、悩みとして1位「休んでも十分に疲労感が取れない」と2位「朝から疲労感を感じてしまうことが多い」を感じており、対策しても疲労感はとれないことが多いようだ。
疲れと眠りのクリニック淀屋橋 院長 中富康仁氏の監修のもとで分類したという10パターンの疲労感のうち、次のパターンが上位となった。
トップは「低モチベ疲労感」。やるべきことが多く、それに対してモチベーションが湧かないことが疲労感に影響していることが明らかに。
1位【低モチベ疲労感】「何かをやりたいが、モチベーションがわかず時間だけが過ぎていくときの疲労感」39.5%
2位【終わらない疲労感】「次から次へと問題や課題があらわれて、こなしきれない疲労感」34.5%
3位【逆説疲労感】「仕事と家庭など、時間が限られている中で複数のことを達成しなければならないことによる疲労感」30.2%
中富氏によれば、こうした疲労感を回復させる力である「抗酸化力」が消耗しており、新たな「細胞のサビ」に対抗できない状態になっていることが原因という。
忙しくて休息が取れず、ストレスにさらされ、睡眠不足である人は、「抗酸化力」の低下に陥りやすい傾向にある。歳を重ねるにつれ、「細胞のサビ」に対抗する抗酸化能が低下する。仕事に子育てに忙しいミドル世代は特にセルフケアが必要だ。
「疲労感の軽減には、日々の生活習慣の見直しと、適度な運動、十分な睡眠時間を確保し、抗酸化力を向上させる栄養成分を摂取することが重要です」(中富氏)
抱える疲労感によって対処法も変わる
対処法は、それぞれの疲労感のパターンに応じて行いたい。そこで中富氏に、アンケート調査結果で上位3位に上っていた疲労感パターンそれぞれについて、対処法を教えてもらった。
中富 康仁氏
疲れと眠りのクリニック淀屋橋 院長
福岡県出身。2002年京都府立医科大学医学部 卒業。
大阪市立大学・疲労クリニカルセンターにて疲労科学を研究したのち、日本で初めての疲労専門クリニックを開設。10年にわたり疲労や睡眠に悩む患者の診療を続けている。疲労の科学、コロナ後遺症による倦怠感、慢性疲労症候群について、YouTubeでの解説も行なっている。
1.低モチベ疲労感への対処法
~何かをやりたいが、モチベーションがわかず時間だけが過ぎていく疲労感~
「前日までの疲労感を回復できずに持ち越しているか、体のリズムを崩している可能性があります。特に睡眠時間が平日に短く、休日に長くなってしまう方に見られる傾向があります。まずは7~8時間の睡眠をコンスタントにとってみてください。朝から自身のパフォーマンスが最大に発揮される、自分にとって最適な睡眠時間を見つけましょう。睡眠で毎日十分に回復ができ、休日も同じ時間に起床できるようになると、メリハリのついた生活リズムとなるため、休日も朝から活動のスイッチが入りやすくなります。日々、重要な抗酸化物質を摂取しておき、体の抗酸化力をキープしておくことも重要です」
2.終わらない疲労感への対処法
~次から次へと問題や課題があらわれて、こなしきれない疲労感~
「疲労感が蓄積していると、作業効率が落ちて、悪循環に陥ります。疲労感が蓄積すると、脳の血流が低下して、パソコンでいうメモリー機能が落ちてしまいます。パソコンのメモリーが小さいと、処理能力が落ち、たくさんのソフトを同時に動かすことができないのと同じです。さらに作業の処理が追い付かないために、睡眠時間が削られてしまうと、この脳のメモリー機能がますます回復しなくなり、より悪循環に陥ります。『立ち止まると動けなくなりそうなので、動き続けている』ときは特に危険です。忙しいとは思いますが、日々、十分な睡眠を確保し、回復できる範囲の作業で切りあげられるよう、抱え込まずに周囲の協力を仰いでみてください」
3.逆説疲労感への対処法
~仕事と家庭など時間が限られている中で複数のことを達成しなければならないことによる疲労感~
「複数のことを同時に行うと、エネルギーをたくさん使用してしまうために、パフォーマンスが低下して悪循環に陥ることがあります。パソコンで複数のソフトを同時に起動させてしまうと、止まりやすくなるのと同じです。できるだけ、同時作業は減らし、やるべきことを列記して、一つ一つこなしていきましょう。
日々の作業は、その都度、回復するように、こまめに休憩をとるなどして、蓄積しないようにするといいですね。たまには、ぼーっと何もしない時間を作ることも重要です。脳のデフォルトモードネットワークにより、ぼーっとしている間に、頭の中が整理されることが知られています。毎日、十分な睡眠と栄養をとって、常に余裕を少しだけ残しておき、忙しい予定の後には必ず回復できる時間を確保できるように計画を立てておくことも重要です」
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「抗酸化力」を向上させる栄養素とは
ところで中富氏が言う、疲労感対策のための「抗酸化力」を向上させる栄養成分とは、具体的にどんなもので、どんな食材から取り入れるのがいいのだろうか。
「体のサビである酸化ストレスをとる抗酸化力をもった栄養素には、ビタミン、ポリフェノール、アスタキサンチンやβカロテンなどのカロテノイドが有名です。これからの秋冬の季節であれば、アスタキサンチンが含まれるエビやカニ、ビタミンやβカロテンが豊富なかぼちゃが挙げられます。またゴマに多く含まれるセサミンもリグナン類というポリフェノールの一種であり、抗酸化作用を高めるといわれています。積極的に摂取すると良いでしょう」
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最後に、ミドル世代のお疲れぎみのビジネスパーソンに、疲労感軽減のための取り組みへのメッセージをもらった。
「ミドル世代は、仕事や家庭において、将来に対する責任が増加する世代です。頑張っていたり、忙しい生活を続けていたりすると、疲労感がマヒしてしまい、悪循環に陥ることがあります。疲労感は、体の異常を知らせる大切なサインです。疲労感を放っておくと、心血管系の病気や生活習慣病を悪化させ、老化にもつながります。また余裕がなくなり、生活の質が低下します。
『頑張っているのに、やりたいことができない』とならないよう、自分の疲労感に耳を傾け、回復に必要な休息や睡眠をとり、大事な栄養素を摂取してみてください。疲労感をうまくコントロールして、よりよい生活を送っていただけることが私の願いです」
疲労感がとれない悩みはつい放置しがちだが、今回示された解決策を知った以上、トライしない理由はない。ぜひ取り組んでみよう。
【調査出典】
サントリーウエルネス株式会社「ミドル世代の疲労感に関する実態調査」
取材・文/石原亜香利