デジタル化や国際化の進展などの環境変化に対して、ブランド・デザインなどの保護強化が求められています。また、スタートアップ・中小企業などによる知的財産を活かした新規事業展開を後押しする必要性も高まっています。そこで「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が2023年6月14日に公布されましたので、その解説をします。
目次
2023年3月10日、「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、同年6月14日に公布されました。
ブランド・デザインなどの知的財産は、模倣されたり、商標権が侵されるなどの不正が散見します。そこで、スタートアップや中小企業などの権利を守り、知的財産を活かした新規事業展開を後押しするために、デジタル化や国際化を見越した法改正が行われました。
本記事では、具体的に法律案の内容を解説します。
「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」とは?
この法律は、知的財産の適切な保護、利便性の向上、国内外における事業者間の公正な競争を図るため、他人の商品の形態の模倣になる対象行為の拡充、商標権者の同意に基づく、類似する商法の登録制度を創設しました。
同時に、委託の新規性喪失の例外の適用に係る証明手続きの簡素化、特許などの国際出願に係る優先権主張の手続きの電子化、外国公務員贈賄罪の罰金額の上限の引上げなどの措置も行われています。
本法律案では、
1.デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザインなどの保護強化
2.コロナ禍・デジタル化に対応した知的財産手続などの整備
3.国際的な事業展開に関する制度整備」
が目的となっています。
【参照】経済産業省 「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました
続いて、不正競争防止法等の一部を改正する法律案について詳しく見ていきましょう。
デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザインなどの保護強化
デジタル化が進む現代、商法においても拡充や要件緩和、秘密保持やデータの保護強化が重要になります。ブランド・デザインなどの保護強化のため、以下の措置事項が公布されています。
登録可能な商標の拡充
商標法について、他人がすでに登録している商標と類似する商標は登録できませんが、先行商標権者の同意があり出所混同のおそれがなければ登録可能となります。
商標法について、自己の名前で事業活動を行う者などがその名前を商標として利用できるよう、氏名を含む商標も、一定の場合には、他人の承諾なく登録可能となります。
意匠登録手続の要件緩和
意匠法について、創作者などが出願前にデザインを複数公開した場合の救済措置を受けるための手続の要件を緩和します。
デジタル空間における模倣行為の防止
不正競争防止法について、商品形態の模倣行為について、デジタル空間における他人の商品形態を模倣した商品の提供行為も不正競争行為の対象とし、差止請求権などを行使できるようにします。
営業秘密・限定提供データの保護の強化
不正競争防止法について、ビッグデータを他社に共有するサービスにおいて、データを秘密管理している場合も含め限定提供データとして保護し、侵害行為の差止め請求などを可能にします。
不正競争防止法について、損害賠償訴訟で被侵害者の生産能力等を超える損害分も使用許諾料相当額として増額請求を可能とするなど、営業秘密などの保護を強化します。
特許法、実用新案法および意匠法について、一定の場合に特許権者の意思にかかわらず他者に実施権を認める裁定手続で、提出書類に営業秘密が記載された場合に閲覧制限を可能にします。
コロナ禍・デジタル化に対応した知的財産手続などの整備
コロナ禍の影響もあり、テレワークを導入する企業が増えたように、知的財産手続等の整備においても、デジタルを前提とした法律案が公布されています。
送達制度の見直し
特許法と工業所有権に関する手続などの特例に関する法律について、在外者へ査定結果などの書類を郵送できない場合に公表により送付したとみなし、同時にインターネットを通じた送達制度を整備します。
書面手続のデジタル化などのための見直し
特許法、商標法と工業所有権に関する手続などの特例に関する法律について、特許などに関する書面手続のデジタル化、商標の国際登録出願での手数料一括納付などを可能とします。
手数料減免制度の見直し
特許法について、中小企業の特許に関する手数料の減免について、資力などの制約がある者の発明奨励・産業発達促進という制度趣旨を踏まえて、一部件数制限を設けます。
国際的な事業展開に関する制度整備
国際的な競争を公平に行うための法律案が、以下になります。
外国公務員贈賄に対する罰則の強化・拡充
不正競争防止法について、OECD外国公務員贈賄防止条約をより高い水準で的確に実施するため、自然人及び法人に対する法定刑を引き上げるとともに、日本企業の外国人従業員による海外での単独贈賄行為も処罰対象とします(両罰規定により、法人の処罰対象も拡大)。
国際的な営業秘密侵害事案における手続の明確化
不正競争防止法について、国外において日本企業の営業秘密の侵害が発生した場合にも日本の裁判所に訴訟を提起でき、日本の不競法を適用することとします。
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※データは2024年10月上旬時点での編集部調べ。
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文/佐藤文彦