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1億円の慰謝料を請求!?上司が勝手に部下の頭に整髪料を塗った「ヘアスタイル強制チェンジ事件」の結末

2024.10.27

裁判所のジャッジ

裁判所
「ゆうちょ銀行は50万円を支払え」

一応、慰謝料請求が認められましたが、1億円から大幅ダウンです。裁判所が認めた上司のパワハラは、以下の2つです。

1. 退職の強要

課長代理がXさんに対して「退職届を書いたか?」と尋ね、退職届を渡して「これを所長に提出するよう」と述べたんです。

―― 裁判所さん、いかがですか?

裁判所
「アウツ!やりすぎ!退職するよう示唆し、さらにXさんが自ら退職するよう精神的圧力をかける行為と見られてしかるべきもの。客観的に見て、社会通念に照らし、度を過ぎた言動だ」

■ マメ知識
今回は「NGな退職強要だ」と判断されましたが、【NGな退職強要か、OKな退職勧奨か】の線引きは結構むずかしいです。下記の記事もどうぞ。
OKな退職勧奨と判断されたケース
NGな退職強要と判断されたケース

2.髪に整髪料をつける

係長が、Xさんの髪に整髪料をつけて髪型をかえたんです。合計8回。その髪型のまま仕事をさせました。Xさんは不本意だったようです。

――ー ん?係長、反論ですか?

係長
「はい。Xさんの髪を触ったり整髪料をつけたことはありません!私の整髪料をあげるか貸すかして使い方を教えたことはありますけど。というのも。Xさんの髪が日常的にボサボサだったり、フケがたまっていたりしたんです。女性社員からも『フケがあって近寄るのがイヤだ』と申告があったので」

裁判所
「シャラップ!あなたの言い分は不合理だね。Xさんの髪にフケがついていて周囲に不快感を与える状況だったなら、あなたとしては、まずはXさんに指摘してフケを払うよう指導するのが自然だ。それをせずにフケの除去に効果があるとは思われない整髪料を渡してその使い方を教えただけって、不自然・不合理です」

裁判所
「てなわけで、整髪料をつけたと認定します!この行為はXさんに屈辱感を与え、その人格的利益を侵害することは明らかです」

上記2つのパワハラについて、裁判所は「会社は職場環境配慮義務を怠った」と認定しました。そして25万円ずつの慰謝料を認め、合計50万円となりました。

▼ 認められなかったパワハラ

Xさんは他にも多くのパワハラがあったと主張しましたが、残念ながら認定されず。認定されなかったものを一部挙げます。


・Xさんに行わせていた業務がXさんの能力に照らして過少だったとはいえない
・基本給の減額が不当な人事評価だったとはいえない
・上司がXさんのかばんを検査した事実は認定できない
・Xさんの日記には、上司がXさんに対し「みんなから色々言われてツライだろうから退職したら」と言われた旨の記載があるが、退職を強要する趣旨とは評価できない
・スキップを強要されたとは認定できない
・モニタリング業務から排除されたとは認定できない
etc.


パワハラ被害を会社に申告しておく

今回のケースは、残念ながら多くのパワハラが認定されませんでしたが、パワハラされたと感じた場合には会社の相談窓口に申告しておきましょう。パワハラ防止法は以下の措置を会社に義務づけています。

(1)「パワハラを許しません!」と周知せよ
(2)「パワハラしたヤツを厳正に対処します」と周知せよ
(3)「相談窓口はココですよ」と周知せよ
(4)「相談者のプライバシーを守ります!」と周知せよ
(5)「相談しても何の不利益もありませんよ」と周知せよ
(6)相談窓口をキチンと機能させよ
(7)相談があればソッコーで事実関係を確認せよ
(8)パワハラが確認できたら、被害者をレスキューせよ
(9)パワハラが確認できたら、加害者にしかるべき措置をとれ
(10)再発防止策をとりたまえ

会社がおざなりな対応をすれば、会社に対して安全配慮義務違反を問える(=損害賠償請求などができる)可能性が高まります。

上司やパイセンのパワハラで悩んでいる方は、会社が上記の措置をとっているか1つずつチェックしてみてください。パワハラされた証拠も確保しておきましょう。

今回は以上です。「こんな解説してほしいな~」があれば下記URLからポストしてください。また次の記事でお会いしましょう!

取材・文/林 孝匡(弁護士)
https://hayashi-jurist.jp(←プロフィールもコチラ)
https://twitter.com/hayashitakamas1

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