TOPIC2:人事施策の希望と実態の乖離
■最も実施されている「必修研修」でも実施率は半数以下
図表3:「あなたの会社では、以下の人材開発施策の中で、どれが実施されていますか。あてはまるものをすべて選んでください。」の回答結果
最も実施されている階層別研修などの「必修研修」であっても、実施率は半分以下の47.3%に留まっている。続いて「OJTリーダー制度」が34.2%、「個人選択型研修」は33.1%となっており、最も少ない「語学海外留学支援」や「MBA海外留学支援」はわずか5%程度にすぎない。
■従業員が多い会社ほど、人事施策を積極的に実施
図表4:「あなたの会社では、以下の人材開発施策の中で、どれが実施されていますか。あてはまるものをすべて選んでください。」の従業員規模別の回答結果
図表4は、従業員規模別に実施率を比較したグラフだ。ここから、ほとんどの施策で共通して、従業員規模が大きいほど実施率が高くなる傾向にあることがわかる。
背景として、従業員が多いほど人事部の予算も大きくなることが考えられるため、当然の結果なのかもしれない。
■人気のある人事施策を実際に実施している会社は少ない
図表5:図表1で「魅力を感じている」と回答した人のうち、その施策が会社で実施されて“いない”人の割合
図表5は、各人事施策に「魅力を感じている」と回答した人のうち、その施策が会社で実施されて“いない”人の割合になる。
このデータから、図表1で魅力的に感じる割合が高かった「個人選択型研修」が51.4%、「ITスキル取得支援」が65.8%と、実際はどちらも会社での実施率が高くないことがわかる。
TOPIC3:人事施策は被支援感を高める傾向にあり、その結果会社へのエンゲージメントも高まる
■人事施策を積極的に実施する会社の従業員ほど、被支援感を実感する傾向にある
図表 6:「あなたの会社は、従業員の成長の支援をしてくれていますか。」(被支援感)の回答結果の施策数ごとの平均値
図表6は、図表3の10施策の実施数ごとに、「あなたの会社は、従業員の成長の支援をしてくれていますか」という問いに対し、「あてはまらない」を1点、「どちらかといえばあてはまらない」を2点、「どちらともいえない」を3点、「どちらかといえばあてはまる」を4点、「あてはまる」を5点とした回答結果の平均値グラフだ。
ここからわかるのは、「人事施策の実施数が多い会社の従業員ほど、会社が自分たちの成長を支援していることを実感している」ということだ。
■従業員の被支援感が高まると、会社へのエンゲージメントも高まる傾向にある
図表 7:「あなたの会社は、従業員の成長の支援をしてくれていますか。」の得点別の会社エンゲージメント平均値
図表7は、被支援感に関する回答得点別に、会社へのエンゲージメントの平均値を並べたグラフだ。この結果から、「会社から成長支援されていると感じている従業員ほど、会社へのエンゲージメントが高い傾向」がみえてくる。
つまり、図表6とあわせて考えると、人事施策は被支援感を高める傾向があり、被支援感が高まると、会社へのエンゲージメントも高まる傾向が想定できる。
本調査における「会社へのエンゲージメント」とは、“今の会社の理念やビジョンに共感している”“今の会社で働き続けたいと思う”“今の会社は魅力的な文化・風土を築いていくことができると思う”“今の会社は成長・発展していくことができると思う”という4つの設問に対し、「あてはまらない」を1点、「どちらかといえばあてはまらない」を2点、「どちらともいえない」を3点、「どちらかといえばあてはまる」を4点、「あてはまる」を5点とした回答の合計値だ。
■希望の多い人事施策を実施すると、被支援感や会社へのエンゲージメントが高まる可能性がある
図表8:人事施策ごとの被支援感・会社へのエンゲージメントとの相関
図表8は、人事施策ごとに被支援感や会社へのエンゲージメントとの相関係数を算出したものだ。
このグラフから「個人選択型研修(0.26、0.17)」「必須研修(0.25、0.16)」「ITスキル取得支援(0.21、0.14)」は、被支援感や会社へのエンゲージメントと相対的に関連が強いことがわかる。
特に「個人選択型研修」や「ITスキル取得支援」は、従業員人気が高く(図表1)、まだ実施していない会社も多いため(図表5)、新たに実施する上で狙い目の人事施策かもしれない。