小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

竹田ダニエルが語る「Z世代的な価値観」とは?都合良く解釈されている日本のZ世代論の問題点

2024.03.09

2021年のユーキャン新語・流行語大賞のトップ10に「Z世代」が選ばれるなど日本でも「Z世代」という言葉は日常的に使われるようになった。商品やサービス、広告面でも同じようにZ世代をターゲットとした事例も増えている。

しかし、本来Z世代とは他の世代(ミレニアル世代やX世代)との連続性によってアメリカで社会学的に研究されているもの。それにも関わらず、日本ではその言葉だけが逆輸入され、マーケティング用語的に、単に「若者」を指す言葉として使われているきらいがある。

そもそも多様性を重んじるとされるZ世代を、一括りに「Z世代はこうだ」と容易に定義すること自体がナンセンスなのではないだろうか。

そんな〝日本でのZ世代論〟への違和感について発信をしているのが、アメリカで研究活動をしながら、日本で執筆・コンサルタント活動も行っている竹田ダニエルさんだ。『群像』に寄稿した記事をまとめた著書『世界と私のA toZ』に続き、20239には『#Z世代的価値観』が発売され、世代を問わず注目を集めている。

今回、竹田ダニエルさんに著書『#Z世代的価値観』の内容に沿って、日本で使われる「Z世代」という言葉への違和感、アメリカとの違いについて、お話を聞いた。

働き方について聞いた後編はこちら

©OTANIJUN.

竹田ダニエルさん

1997年生まれ、カリフォルニア出身、在住。「音楽と社会」を結びつける活動を行い、日本と海外のアーティストをつなげるエージェントとしても活躍する。202211月には、文芸誌『群像』での連載をまとめた初の著書『世界と私のA to Z』(講談社)を上梓。そのほか、現在も多くのメディアで執筆している。

初の著書で感じた、「Z世代」という言葉への勘違い。

 ――まずは、竹田さんがZ世代に関する執筆を始めることになった背景について教えてください。

 日本語が第一言語ではなかったこともあり、日本でライターになることは考えていませんでした。ただ、大学生の頃から音楽業界での仕事に携わっていて、音楽関係のライターや編集者との繋がりがあったんです。そんな中、新型コロナウイルスが流行し始めた20202月頃、「Z世代と音楽業界とメンタルヘルスをテーマに書いてくれないか」とあるメディアから依頼をいただきました。それが人生で初めて書いた日本語の記事でした。当時はまだ日本でZ世代という言葉もあまり定着していませんでしたが、運良くその記事が広まり、それ以降、そういうトピックを書ける人がいないと、さまざまな媒体からご依頼をいただくようになりました。

――その流れで、本の元となる『群像』への寄稿を始めるんですね。

そうですね、『群像』の編集の方から「アメリカのZ世代と大統領選について、短いコラムを書いてくれないか」という依頼を受けたのがきっかけです。当時、2020年の秋頃は、アメリカで大統領選が話題になっており、それ以降「今、アメリカのZ世代にどういうことが起きているのか」に着目した連載を始めました。当時は、多くの方が「Z世代とは何だ」と興味があり、話題性も高かったのかもしれないですね。

2022年11月には発売された竹田ダニエルさんの著書『世界と私のA to Z(講談社)Z世代当事者である竹田ダニエルさんがSNS、音楽、映画、食、ファッションなど多角的な視点から今を紐解くエッセイだ。 

――当時からアメリカではZ世代に注目が集まっていたのでしょうか?

自分もそうなんですが、2020年頃はアメリカのZ世代の一番上の人たちが大学を卒業して、仕事をし始めるタイミングで、経済力を持つ層へと移行が始まったのと、オフィスカルチャーにも影響を与えるとして、注目された時期でした。さらには、ロックダウンによるメンタルヘルスへの影響に関しても中学生から大学生まで大きな打撃を受けていると、アメリカでは話題になっていたんです。日本でいう「さとり世代」「ゆとり世代」のように、突然出てきた言葉ではなく、ミレニアル世代、X世代、ブーマー世代の連続性のあるものとして捉えられている分、社会的にも研究されることも多いです。だからこそ、ただの「コロナが若者に与えた影響」という表層的な「若者論」ではなく、具体的にZ世代が今までアメリカ政府から受けてきた絶望や裏切りについて、連続的に分析されたのです。

――『世界と私のA toZ』から、2冊目の『#Z世代的価値観』で書いていることに変化はありましたか?

  2冊目は、1冊目に書けなかったことというよりも、毎月起きていることや、このトレンドにどういう批判点があったのか、今起きているデモの話などを連載で書き続けていたものをまとめています。1冊目は連載を始めるにあたり「Z世代とは何か」や、アメリカの若者の話をする上で欠かせないインターネットやテクノロジー、人種など、どういう社会背景があるのかを大枠の前提知識として共有しなければいけませんでした。その前提を「連載第何回目で書いたように」と、レファレンスできるようになったので、だんだんと細かい話もできるようになってきていますね。

 ――『#Z世代的価値観』の冒頭では、日本のいわゆるZ世代の話ではないと定義をされていますね。

1冊目を出してから、勘違いされた部分があったように思いました。本に書いているアメリカのZ世代を、日本に当てはめて考える方が多くて、「日本のZ世代と比べてどうですか?」とか、そういった声もあって。そもそも私は日本のZ世代はあまり定義がされていない中、比較対象として考えていませんでした。だから2冊目では、アメリカのZ世代とZ世代的価値観の話をしていると、「はじめに」で定義が違うと、冒頭の段階で書くようにしました。

――全体を通して、竹田さんの文章は参考文献を多く引用されていますよね。

自分では、論文を書いている感覚に近いですね。そもそも理系の学位を取る中で、ほとんど論文しか書く機会がなく、そのトレーニングが影響として大きいと思います。毎月論文調の連載を書くのは大変なんですけど、それには理由があって。『群像』で書いている以上、人文系においては、学者や研究者、教授など、アカデミックかつ専門家の方々が多いわけで、自分もそれに並ぶとなると、適当なことを書けないと思っています。あとは、アメリカでは、トレンドの背景について書く場合、参考文献や他の記事、SNSを引用するメディア文化があり、その影響もありますね。

――本書もとても客観的に書かれている印象です。 

DJのように過去の記事や事実、現象を繋いで、何か連続性を見出すことが、自分が生み出せる価値だと思っています。私が一番得意なのは、「インパクトのある、独特な文体であること」よりも「一つの現象からいろいろと紐付けて、社会現象の理由を考えること」ですね。

――内容についても伺っていきたいのですが、「Z世代」という言葉の使われ方への違和感は、いつ頃から強くなってきたのでしょうか?

執筆を始めた2020年頃からありましたね。最近でも、自分(竹田ダニエルさん本人)のことを「日本の若者に危機感を感じていて、アメリカの若者みたいに声を上げようとしている〝Z世代の代弁者〟」のように扱うケースがあります。取材されている方は善意や義務感があっての質問だと思うんですが。「Z世代はこうだ、と断言してもらいたい」「最近の若者はすごいと言ってほしい」という〝狙い〟を感じることもありますし、そういった広告コンテンツも多い。そういったものは、大人にとって都合の良いコンテンツとして、消費されている感じがします。Z世代の代弁者を求める気持ちはわかるんですが、自分はそのように「ウケの良い話」ではなく、たとえ不都合であったとしても、「本当の話」をしたいと言うようにしていますね。

――本書の中でも、「代弁者ではない」とありましたね。

日本だけではないと思うのですが、それって要は、何かしらの希望を持ちたい気持ちの裏返しだと思うんです。「どこかの国では若者たちがすごく頑張っていって、連帯していて、大人たちも声を聞いていて、社会を良くしていて…」みたいな。でも、そんな幻想みたいなことは存在しないんですよね。アメリカの若者が環境破壊に関するデモや「静かなる退職」などの行動を起こすのも、ただ単に社会が絶望的だから。日本の若い世代とは比べられないですけど、まったく違うかたちで絶望感を持っていたり、大変な思いをしたりしています。だからその行動だけを「すごく良いこと」として讃えるのは、その裏にある社会の劣悪さを無視することになりますよね。 

出典:TikTokのストーリーズより(著者スクリーンショット)

「静かなる退職(Quiet Quitting)」とは2022年頃からアメリカで話題になっている働き方。仕事とプライベートを明確に線引きし、あえてやりがいや自己実現は求めず、「仕事は仕事」と割り切っているのが特徴とされる。

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2024年4月16日(火) 発売

DIME最新号は「名探偵コナン」特集!進化を続ける人気作品の魅力、制作の舞台裏まで徹底取材!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。