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「必要は発明の母」とは、発明は必要の元に行われることを指す。発明家に絡めたことわざとして耳にしたことがあるかもしれないが、正しい意味や由来を知っているだろうか。
本記事では、「必要は発明の母」について詳しく解説していく。例文を交えた使い方や類義語にも触れていくので、ぜひ理解を深めてほしい。
「必要は発明の母」とは?
「必要は発明の母」とは、大まかに言うと「発明は必要性から生まれる」ということだ。人々が必要としてこそ発明されるという意味だが、以下ではさらに詳しい意味と由来を解説していく。
■「必要は発明の母」の意味
必要は発明の母を辞書で引くと、意味は以下の通り。
必要(ひつよう)は発明(はつめい)の母(はは) 読み方:ひつようははつめいのはは 発明は必要があるところから生まれるということ。 |
ここで言う「母」とは、いわゆる「きっかけ」や「源」を指す。つまり、人々が必要とする・欲する・問題にするというきっかけがあって、初めて発明は成されるという意味だ。
生命に関わる重大なことから、いささか不便だと思う小さなことまで、発明を必要とする逼迫性は問わない。今我々の身の周りにあるものすべてが、歴史に名を残す発明家の手によって生み出された発明品である。
例えば、イヤホンの「発明」には、周囲に迷惑をかけずに屋外で音楽を聴きたいという「必要」がある。また、ホッチキスの「発明」にも、紙の使用量が増えるなかでいかに効率よく一まとまりにするかという「必要」があるのだ。
必要は発明の母ということわざは、数々の発明の裏側には、人々の必要とする心があることを教えてくれている。
■由来
必要は発明の母の語源は、アイスランドの作家であるジョナサン・スウィフトが記した『ガリバー旅行記』の中の「リリパット国渡航記」にある。
発明と聞くと、発明の父とも言われるトーマス・エジソンを思い浮かべるかもしれない。彼がスウィフトの言葉を借りたことによって広まったことわざではあるが、正確には旅行記に出てくる一文がきっかけとなっているのだ。
ちなみに「ガリバー旅行記」は、子ども向けの著書として知られている。しかし、人間の手のひらに乗るほどの小さな人間の国が登場し、実際のところ風刺作家とも言われたスウィフトのイギリス政府への批判が込められていることが分かるだろう。
「必要は発明の母」の使い方
「必要は発明の母」は、先述の通り、汎用性の高い言葉だ。ここでは、必要性の高さに応じた2通りの使い方を、例文を挙げて解説していこう。
■(1)生命に関わる重大なケースへの使い方
【例文】
・被災地に効率よく物資を届けるために、大型ドローンの開発を進めてみてはどうだろう。必要は発明の母というが、人々の救済のために心を砕く団体や企業は多い。
上記の例文では、必要が「物資を必要とする被災地の人々」、発明が「未開発の大型ドローン」と考えられる。
■(2)いささか不便だと思うことへの使い方
【例文】
・家事の負担を減らしたいという思いから、現在は多くの便利グッズが誕生している。100円均一ショップなどで揃うアイテムを使っており、コストパフォーマンスも良好だ。経済を圧迫せずに家事を楽にしたいという主婦の魂。これこそ必要は発明の母だろう。
上記の例文では、必要が「家事の負担を減らしたい思い」、発明が「100円均一ショップのアイテムを利用した便利グッズ」となる。
「必要は発明の母」の類語
必要は発明の母には、「窮すれば通ず」という類語が存在する。場面に応じて使い分けられるよう、意味と語源をあわせて覚えておこう。
■「窮すれば通ず」
「窮すれば通ず」を辞書で引くと、意味は以下の通り。
窮(きゅう)すれば通(つう)ず 読み方:きゅうすればつうず 《「易経」繋辞下から》事態が行き詰まって困りきると、かえって思いがけない活路が開けてくるものである。 |
「窮すれば通ず」とは、つまり、「困って仕方がなくなると、状態を変えざるを得なくなり、行動することで思いもよらない解決策を考えだせる」という意味だ。問題や不便さという必要に迫られてこそ、発明品は誕生するという必要は発明の母と似ているとわかる。
また、「窮すれば通ず」には「苦境にあっても正しい道を歩む」という意味もあると覚えておこう。
ちなみに窮すれば通ずの語源は、上記の通り、古代中国の一冊『易経』にある。易経は、約3000年前に発展した「易」と呼ばれる学問を経典としてまとめた書物だ。この中に登場する「窮すれば即ち変ず、変ずれば即ち通ず、通ずれば即ち久し」という一文に由来する。
「必要は発明の母」の英訳
「必要は発明の母」を英訳すると「Necessity is the mother of invention.」だ。日本語に訳すと、そのまま「必要は発明の母」となる。
ちなみに、きっかけや源を表す「母」は「the mother」ではなく、起源を意味する「the origin」としても問題はない。しかしあえて「母(the mother)」とするところに、語源となった「ガリバー旅行記」の著者であるジョナサン・スウィフトの偉大さを垣間見られるだろう。
実は汎用性の高い「必要は発明の母」
「必要は発明の母」ということわざを聞いて、ピンとくる人はあまりいないかもしれない。
「発明は必要に迫られてこそ成される」という意味だが、実は非常に汎用性の高い言葉だ。必要性が高いことから、比較的低いことまで幅広く当てはめられる。物事の誕生に絡めて、ぜひ使ってみてほしい。
文/shiro