54.4%が 時間外労働の上限規制によって医療の質は「下がる・やや下がる」
「時間外労働(残業)の上限規制によって、医療の質はどうなると思いますか」との質問に対する回答は、「低下する」27.5%、「やや低下する」26.9%、「向上する」5.0%、「やや向上する」10.6%、「変わらない」30.0%で、半数以上となる54.4%が医療の質が低下すると回答した。
■時間外労働の上限規制によって心配することは、「申請を行わない残業(サービス残業)の誘発」
「時間外労働(残業)の上限規制によって心配していることは何ですか」との質問に、回答状況は「申請を行わない残業(サービス残業)の誘発」47.8%、次いで「病床のひっ迫や救急搬送の困難」46.1%、「収入の減少」33.3%、「主たる勤務先による副業や兼業の禁止」31.9%だった。
■時間外労働(残業)が発生する原因は、最多が「医師不足」で56.9%
「時間外労働(残業)が発生する原因は何だと思いますか」という質問に、回答は「医師不足」56.9%、次いで「救急の受け入れや急患対応」54.7%、「担当患者の容態急変時の対応」40.3%だった。
救急の受け入れや患者の急変時の対応など、やむを得ない理由が上位で残業が発生していることからも、医師不足の解決が求められる。
時間外労働の上限規制に対し、勤務先で取り組むべきことは「医師不足の解消」
「時間外労働(残業)の上限規制に対し、勤務先で取り組むべきことは何だと思いますか」の質問に対して回答は、最多が「医師不足の解消」44.7%、次いで「勤務体制(当直体制や休暇取得)の改定」30.3%、「宿日直勤務の内容や制度の見直し」29.7%だった。
■56.4%が勤務先の就業規則を「見たことがない」
「勤務先の就業規則を見たことがありますか」との質問に対して回答は、「見たことがない」56.4%、「見たことがある」43.6%だった。
上限規制の施行に対し、勤務体制(当直体制や休暇取得)の改定に取り組むべきとの声があがった一方で、社内規程や社内ルールなどを把握できていない様子が推察できる。
■長時間労働を改善するための取り組みを行なっている勤務先は22.8%
「勤務先では医師の長時間労働を改善するための院内ルールの策定など、何か取り組みが行われていますか」という質問に、回答は「行われている」22.8%、「わからない」33.9%、「行われていない」43.3%だった。
取り組みがされていない・わからないが77.2%で、医師の長時間労働を積極的に改善しようとする動きがまだ少ないことが考えられる。
調査結果からの考察
政府は2024年4月に医師の時間外労働を年間960時間に上限規制することで、『医師の働き方改革』をさらに推し進め、医師の長時間労働の改善や健康を確保しながら勤務できる環境の実現を目指している。
しかし、今回の調査結果から、2024年1月中旬時点で医師に対して病院側の対応が追いついていないだけでなく、上限規制を守ることができないと諦めている医師が多くみられた。
このままでは上限規制後、規制違反となってしまう病院が出てくる恐れがある。また、上限規制を守るために申請を行わない残業(サービス残業)が医師にとって当たり前になったり、病院側も容認したりする状態を招いてしまう可能性も考えられる。
医療は命に関わる仕事であることや、勤務体制が複雑であることなどから、規制やルールを設け、運用していくことは他業種と比較すると難しい面がある。しかし、医師不足改善のためにも医師をはじめとする現場の医療スタッフに寄り添ったルールや制度を整備し周知・運用することは、働きやすい環境の構築や経営リスクの低減やガバナンス向上につながる。
『医療の2024年問題』が迫る今、医療業界が対応すべきことの一つだと考えられる。
調査概要
調査名/医師の働き方に関する実態調査
調査期間/2024年1⽉17日~1月19日
調査⽅法/インターネットを利⽤したアンケート調査
有効回答数/360名
対象条件/全国の20代以上の医師
構成/清水眞希