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大手企業とスタートアップの協業が加速している理由

2024.01.12

技術革新に挑む企業の取り組みを紹介する「イノベーションの旗」シリーズ。

前編に続き、大手企業とスタートアップのマッチングを手掛けるプロジェクトジャパンの取り組み、協業によって誕生した製品について紹介する。

前編はこちら

日本が30年間、給料が上がらない大きな原因の一つは、付加価値のある製品を生みだせないことにある。付加価値にはイノベーションが不可欠だ。今日、ビジネスパーソンにも企業にとっても、技術革新は最重要課題である。

株式会社プロジェクトジャパン、松谷卓也代表取締役社長が2004年に起業したこの会社は、イノベーションをアピールするスタートアップと、大企業のマッチングを担う会社だ。スタートアップと大企業をマッチングし、協業を演出する年1回主催のイベント、ILS(イノベーション・リーダーズ・サミット)の11回目が、昨年2023年12月4~7日、虎ノ門ヒルズで開催された。会場には世界18か国を含む200以上のスタートアップ企業のブースが出展。大企業スタートアップの商談件数は約2900件。アジア最大規模のオープンイノベーションとなった。

株式会社プロジェクトジャパンの松谷卓也代表。アジア最大級のオープンイノベーションの祭典「ILS」を手掛ける。

ゼロエミッション船とスタートアップ

学生時代から起業を考えていた松谷卓也はリクルートに入社。担当した経産省が後押しするスタートアップ企業育成のプロジェクトに将来性を感じ、自ら手掛けるために起業。福井俊彦元日銀総裁と面識を得ることで、数多くの大企業とのコネクションの構築に成功。大学の研究室等と、スタートアップを志すグループ、そして大企業とこれまでばらばらだったセクターが一堂に会し、マッチングと協業を演出するILSを2014年から運営する。

ILSを介してスタートアップと大企業がマッチングし、協業によって製品につながったケースはこれまでに数千件に及ぶ。中でもここ数年、誕生したもので印象に残るものを松谷は挙げる。

商船三井はCO2を排出しないゼロエミッション船を開発する。タンカーに帆を設置して、風の力でタービンを動かし電気を作り、その電気で水素を生み出し、船の燃料にする仕組みだ。

帆に最適な風を受けることが重要だが、既存の風況データはメッシュが荒い。そこで京都大学発のメトロウェザーという会社と協業が成立した。このスタートアップは、より正確な風況データや風況予測が可能なイノベーションを持っている。

メトロウェザーは風況計測ソリューションを提供。同社のドップラー・ライダー(写真)は、商船三井との協業で海運領域での風況計測に用いられている。

拍車がかかる超高齢化社会で、介護ベッドの技術革新にも大手とスタートアップの協業が新製品開発に力を発揮する。

介護施設では高齢者の状態の把握が必須だ。大手化学メーカーは薄膜のセンシング素材を持っている。ベッドでの患者の状態を把握する技術に長けているスタートアップが、大手化学メーカーと協業することで、進化したIOTベッドの開発につながった。

このIOTベッドは高齢の患者がベッドにいるかどうかはもちろん、呼吸の状態や体重の検知、さらに睡眠の震度の可視化、それらの実証実験に成功している。新製品は深夜の職員の施設の見回りという重労働を解消する可能性を秘めているというわけだ。

注目はスタートアップの基礎技術

ILSに参加するスタートアップは約850社。ILSの会場ブースへの出展は約200社。それらはアドバイザリーボードメンバーの推薦によるものだ。アドバイザリーボードメンバーとは、ILSのために政府機関、地方自治体の関連機関等で構成されている。

スタートアップと大手企業の協業によって誕生する新製品は、一般消費者に向けたものは皆無と言っていい。大手企業はスタートアップや大学の研究室等に、素材、再生可能エネルギー、電池、脱炭素、デジタルヘルス等の分野の基礎研究の成果に注視している。

松谷卓也は言う。

「経費節減もありますが、以前は基礎技術の研究は大手企業の内部でやっていました。でもその方法だと製品化するまでに時間がかかる。製品開発のスピードが加速する今日、開発が遅れれば中国製品をはじめ諸外国の製品に勝てない。基礎技術はスタートアップや大学の研究室に任せて、その応用的なところを自分たちはやりたいと」

生成AIの発展一つ見ても、そのスピードは目をみはるばかりだ。自社で何でも賄う日本の「垂直統合型」は過去のものとなりつつある。GAFAMを見るまでもなく、世界は「水平分業型」が主流だ。何から何まで企業が自前で取り組むのではなく、基礎研究の分野についてはスタートアップが担う、それが時代の流れである。

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