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言いたいことを「ひと言でまとめる」ための8つのプロセス

2024.01.09PR

■[プロセス7]相手がどう動いたかを観察する

7番目のプロセスは、観察力です。

振り返るとここまでは、勇気を持ち→自分を知り→相手を知り→目的地を明確化し→伝えたいことのコアを探し→余計なものはばっさり捨てて伝える、といった道のりを進んできました。

しかし、言いっぱなし、伝えっぱなしは、不完全な結果を生みます。

伝えたあとに何が起きたか、「ちゃんと何かをGETできたのか?」を見極めなければなりません。そのために、観察力が必要です。

まだ新人だったころ、とあるクライアントのキャンペーン企画提案の会議に参加することになりました。新人ですから、現場でやれることはごくわずかです。

すると先輩から、「企画提案の最中、スクリーンは見なくていいから社長の顔をずっと見ていてくれ。終わったあとに何が起きたか聞くから」と言われました。

社長の顔だけ見ていて何になるのだろうと思いながらも、言われたとおりにしていたところ、先輩に言われた意味がだんだんわかってきました。当初、社長は無表情で話を聞いていましたが、先輩たちのジョークを交えたトークでときおり笑ったり、調査結果を見て考え込んだり、企画案を真剣なまなざしで見つめたりと、さまざまな表情をしています。そして、ほかの役員たちの様子も見てみると、それぞれ違った反応を示していました。

企画提案終了後、「社長の反応はどうだった?」と先輩に聞かれた私は、こう答えました。

「最初は退屈そうにされていましたが、前段のつかみでだんだんほぐれてきて、ブランドのコンセプト案には深くうなずいていました。調査結果では険しい顔をしていましたね。CM企画は、ほかの役員さんたちはオーソドックスなA案に反応を示していましたが、社長はコメディ調のC案で笑っていたので、もしかしたらあの案が通るかもしれません」

ふんふんと聞いていた先輩は、「調査結果に厳しい表情か……。ありがとう。あの社長さん、結構心配性だから、思い切った案を選ばせるならデータの裏付けが足りないかもしれないな。よし、もうひと押しだ」と、次の動きを始めたのです。

その後、何度かの調整を経てキャンペーン企画は自社の案で決定となりました。しかも、選ばれたのはC案でした。そして私はこのとき、相手を観察し、心の動きを読み取り、よりよい結果につなげることの重要性を初めて知ったのでした。

伝えたいことをひと言にまとめて伝え終えたあとにすべきは、相手の表情、行動などをつぶさにチェックして、「伝わったかどうかを見極める」ことです。

●こちらの目を見ている/こちらの目を見ていない
●顔の表情が暗い/明るい
●笑っている/引きつって笑っている
●視線が落ちている/上を向いている/そっぽを向いている
●声のトーンが暗い/明るい
●背中を丸めて、うなだれている/背筋が伸びていて、胸を張っている
●手を組んでいる/腕を組んでいる
●だらだらしている/集中している

とはいえ、ただじろじろと相手を見つめているだけでは、気味悪がられるだけです。

そうならないために、次のトレーニングをしてみてください。


観察力を高めるトレーニング
(1)日常的に自分の周囲を見回す習慣をつける。
(2)わずかな変化に注意を払う。
(3)いきなり決めつけず、柔軟な思考で物事を見る。
(4)あらゆる物事に興味や関心を持つ。
(5)わからないことを積極的に調べる。


言いっぱなし、投げっぱなしにしないということを心がけましょう。

●「観察力」と「洞察力」の違い

観察力と同じくらい、「洞察力」という言葉もビジネスの現場においては出てきます。よく混同されるこのふたつの言葉を、私はこう区別しています。

●観察力→目に見えるあらゆる変化に気づく力
●洞察力→目に見えない物事の背景や本質を見抜く力

たとえばあなたが部下に仕事を頼んだとします。

ところが、その反応を観察してみると、

●いい仕事のはずなのに暗い顔をしている。
●あまり喜んでいないように見える。
●伏し目がちに背をすぼめている。

といった情報が入ってきます。これが「観察力」です。

同時に、部下がなぜ浮かない顔をしているのかを「洞察」してみると、

●やりたい仕事の方向性が変わったのだろうか?
●体調が悪いのだろうか?
●チーム内で何か問題を抱えているのだろうか?
●もしや、仕事ではなくプライベートにトラブルがあるのでは?
●あるいは、ライバル社から引き抜きの話があるなんてことは……?

と、さまざまな推論が生まれるはずです。

ここで大事なのは、目に見える情報だけでは、ときに間違った結論を導いてしまうということです。サン=テグジュペリの『星の王子さま』にも、「本当に大切なものは目に見えない」と書かれています。観察するだけでなく、なぜその状況が起きているのかを自分なりに考えて仮説を持つことが大事です。

●そういえば、彼の趣味はアイドルの追っかけだったな。
●確か武道館のチケットが取れたと喜んでいたような……。
●もしかして、アイドルのライブと仕事のスケジュールがかぶっているのでは……?

このように仮定をしたら、こっそり確かめてみましょう。

「もしライブのスケジュールとかぶっているのなら、ライブに間に合うようにサポートするよ。やってくれる?」

部下がパッと明るい顔をして大きくうなずいたら、あなたの洞察力に拍手です。

ただし、いきなり洞察力を高めろと言っても、なかなか難しいとは思います。

たとえば謎解き系の物語は、まさに観察と洞察のお手本です。

『名探偵ホームズ』や『古畑任三郎』などの推理ものの物語では、主人公たちは犯人が残していった手がかりを「観察」し、事件の背景にある人間の感情や行動を「洞察」することで、トリックや罠を見破り、事件を解決しています。

いままでとは少し違った視点でこれらの物語を見てみると、観察と洞察のトレーニングになるので試してみてください。

■[プロセス8]人間関係を発展させる

さて、ひと言でまとめて伝える過程をやり終えると、最後の段階「新しい人間関係」が待っています。

あらためてお聞きしますが、あなたは伝えたい相手とどういう関係になりたいのでしょうか?

私は伝えるという行為は、「人間関係を改善させるためにやること」だと考えています。

「この世の悩みのすべては、人間関係である」と、『嫌われる勇気』でお馴染みのアドラーが言っていました。

もし、この世に自分以外誰もいなかったら、比較対象がなく、意見の相違もなく、悩みを持つきっかけすらないでしょう。

でも、そんな世界は、きっと孤独でつまらないものだと思います。苦言だって、きちんと相手と向き合って伝えれば、新しい人間関係を築いていくきっかけになることもあります。

●人間関係の「発展」と「崩壊」には5段階ある

「あの人とはだいぶいい関係を築けてきたよ」
「なんか、最近あの人とうまくいかなくてさ」

太古の昔から、人間関係の悩みは尽きないものです。

すでにギリシア時代から、嫁姑問題や、若者が年長者の話を聞かないといった人々の悩みが書物に残されていたそうです。

では、人間関係とはどのように発展し、またどのように崩壊するのでしょうか?

それぞれの段階におけるコミュニケーションの特徴を知ると、現在進行中の人間関係を客観的に見られるようになります。

●人間関係を「発展」させる5つの段階

(1)「初めまして!」出会いの段階
初対面の段階。簡単な挨拶や会釈を通して、人間関係を発展させようか、それとも顔見知り程度にとどめようかといった判断が行われます。

(2)「どんな人だろう?」実験の段階
自己紹介や時候の挨拶などの表面的な世間話を通じて、相手のことを探り合っていく段階です。ここでもし共通の話題や興味・関心が見つかれば、人間関係の発展へと向かっていきます。

(3)「あなたは私の友」関係強化の段階
相手の性格、家族、価値観などについて、内面に踏み入ったコミュニケーションが行われます。言葉が多くなくとも相手の気持ちが理解でき、お互いに頼り合う人間関係になっていきますが、親密さは当事者にしかわかりません。

(4)「彼らは友」統合の段階
お互いの関係が世に認められ、周囲の人々が当事者同士の人間関係の親密さを知るようになります。周囲の人々が一方のことを他方に尋ねたり、一方が他方の気持ちを察して他方の代わりに物事を判断することが自然にできるようになります。

(5)「私たちは家族・パートナー」結束の段階
結婚や契約などによって、もっとも親密な人間関係を結ぶ段階です。社会に対して、相手に対する責任を約束するようなコミュニケーションが増えます。これは他人同士が家族になる「婚姻」などで到達する段階となります。

人間関係はこのように発展し、親密さを増していきます。

誰かに何かを伝えるときは、「自分と相手がどこの段階にいるのか? あるいは、どこの段階にまで行きたいのか?」を考えてコミュニケーションを取る必要があります。

もちろん、人間関係はいいときばかりではありません。逆に悪化することもあります。その段階はこのようになっています。

●人間関係が「崩壊」していく5つの段階

(1)「何かしっくりこない」食い違いの段階
これまでは信頼感や親密さによって耐えることのできた相違点についに我慢ができなくなり、相互非難、攻撃が始まる段階。お互いの注意は、共通点ではなく相違点に向けられます。

(2)「仲直りする方法はないか」制限の段階
衝突を避けるために相違点に関するコミュニケーションは回避され、表面的なコミュニケーションになっていく。この段階ではまだ人間関係改善への努力と、周囲に関係悪化を知られないための努力が続けられる。

(3)「少し距離を置こう」沈滞の段階
ついに、お互いの内面的なコミュニケーションはなくなり、社交辞令的な冷たいコミュニケーションとなる。この段階では人間関係の改善が困難になる。

(4)「あなたと私は合わない」回避の段階
率直で直接的に、非友好的コミュニケーションとなる。非言語的コミュニケーション(表情、視線、身振り)によって相手への敵対心、嫌悪感、憎悪を表現する。たとえば婚姻関係の別居段階がこれにあたります。

(5)「あなたと別の世界へ」関係終結の段階
こちらは発展の段階と真逆、社会的別離である離婚や婚約解消が主になる段階。自分自身に納得させるための、また、関係が終結した相手のいない新しい生き方について考える、個人内コミュニケーションが主となる。

いかがでしょう?

思い当たる節がある人もいるのではないでしょうか。

人間関係の崩壊はビジネスの現場でも起こりますが、もっとも決定的な崩壊は婚姻関係でしょうか。日本人の3人に1人が離婚する時代ですが、その崩壊のプロセスを知ることで、転ばぬ先の杖になるかもしれません。

さて、これまで8つの「ひと言でまとめる」ためのプロセスを見てきました。

8つのプロセスは多いように思えて、一度習得してしまえばスムーズに実践できるものばかりです。

トライ&エラーを繰り返さないと、いい言葉は生まれないものです。毎日10分だけ、相手に伝えたいことを考える時間を持つ習慣を身につけてください。

また、どうしても気持ちがうまく伝わらない相手もいます。

そのときは、とりあえず距離を置いてください。

人間関係には「適切なタイミングと距離感」というものが存在します。

お互いの気持ちが同調し、関係が勢いよく発展することもあれば、何をやっても気持ちが合わないときもあります。

そういうときにもっともしてはいけないのは、相手の気持ちを無視して強引に伝える行為を繰り返すことです。

相手のことを思うなら、そこはいったん引いて、やがて来るときを待ちましょう。

羊飼いの少年の旅を描いたパウロ・コエーリョ作の『アルケミスト』は、宗教的にも哲学的にもすばらしい小説ですが、ここに出てくる「人は出会うべきタイミングで出会う」という一節が私はとても好きです。

いま合わないその人とは、タイミングがずれているだけかもしれません。

あなたが愛と敬意を持ってその人とつながりたいと思う限り、いつかいい関係を築ける日は来る。そう信じてみてください。

★ ★ ★

いかがだったでしょうか?

「ひと言でまとめる技術」はビジネスパーソンの悩みだけを解決する技術ではありません。話をしてもパートナーに言葉が届いていないと感じている方。自分は面白いと思ったのに、友人の反応はイマイチ。ちゃんと伝えたつもりなのに間違った料理を出されてしまった。こんな悩みも解決する伝え方のコツも満載です。

「伝え方」を追求し続けてきた著者が、すべての「伝え方」で悩む人たちに手にしてほしい技を是非、書店でチェックしてみてください。

『ひと言でまとめる技術
言語化力・伝達力・要約力がぜんぶ身につく31のコツ』
著/勝浦雅彦/アスコム

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勝浦雅彦
(かつうら・まさひこ)
コピーライター。法政大学特別講師。宣伝会議講師。
千葉県出身。読売広告社に入社後、営業局を経てクリエーティブ局に配属。その後、電通九州、電通東日本を経て、現在、株式会社電通のコピーライター、クリエーティブディレクターとして活躍中。また、15年以上にわたり、大学や教育講座の講師を務め、広告の枠からはみ出したコミュニケーション技術の講義を数多く行ってきた。クリエイター・オブ・ザ・イヤーメダリスト、ADFEST FILM 最高賞、Cannes Lions など国内外の受賞歴多数。著書に『つながるための言葉』(光文社)がある。

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