鉄道客室乗務員たちの熱い思いが支える車内販売
取材の最後に、山﨑さんと三澤さんの2人に、思い出に残っている乗客のエピソードを聞いて見た。
山﨑さんは、「乗務を終えて、新大阪駅で降りたときのことです。ホームで別れを惜しんでいたカップルがいらっしゃったのですが、彼氏が新幹線に乗車し、去ってしまったら、彼女がホームで泣き崩れてしまったのです。
思わず、『大丈夫ですか?』と声をかけさせていただいたのですが、すると、私にしがみつかれたのです。しばらく、そっと肩をお貸ししたら、「大丈夫です。ありがとうございました」と笑顔で去って行かれました。
そのとき、改めて思ったのです。乗客の皆さまの1人1人に、それぞれ人生があって、頑張ってるんだと……。初心に戻りましたね。これまで以上に、乗客の皆さまに心地良い旅をしていただきたい……そう感じました」
「私は、本当にワゴン販売が楽しくて楽しくてしょうがないんですよ」というのは、三澤さん。
「ホームにいらっしゃるお客さまを確認して、『今日は男性が多いからアルコール類やおつまみを多めにしよう』とか、『休日でお子様が多いから、お菓子をできるだけワゴンに積もう』とか、考えるんです。読みが当たって売れたなら、それは私がお客様のニーズに応えられたということ。『ヤッター!』と思います」
心底楽しそうな笑顔を浮かべる三澤さんを見て、山﨑さんは、「この仕事を楽しいと思ってもらうのは、うれしい限りです。インストラクターとして、私の分身とも成り得る鉄道客室乗務員を育てていきたいですね」
東海道新幹線に乗車したら、改めてパーサーの立ち居振る舞いを見て欲しい。そこには、“旅の途中”の乗客に快適に過ごしてもらおうと真摯な姿勢で向き合う、ステキな笑顔があるはずだ。
取材・文/寺田剛治
※こちらの記事は2016年12月に取材したものを再編集のうえ掲載しています。データは当時のものです。