【1】…就寝の1時間前には液晶画面を視るのをやめる…効果はあるが必須ではない
いよいよ最後、「就寝の1時間前にはスマホやPC、テレビなどの液晶画面を視るのをやめる」。
「液晶画面から、紫外線に近いブルーライトが出ているので、脳が昼間だと誤解して覚醒してしまうのです。やっぱり光っていうのが一番人間への影響っていうのは大きいので、やめるのが理想ではあります」(安達さん)
とはいえ、今の時代、眠る直前までスマホを見ていないと不安になる人もいる。またスマホやテレビを見ることでリラックスできる人も多い。そういう人たちが無理にやめるのは精神衛生上の悪影響があり、果たして本当に睡眠の質がよくなるのかどうかは疑問だと安達さんは語る。
「例えば、寝る寸前までBGMのようにテレビをつけている、これが睡眠に影響があるかというと、私はほぼないと思うんです。また、眠る前に最後にメールチェックやラインをチェックしないと不安で眠れない人もいるでしょう」(安達さん)。
眠りの専門家として安達さんが一番心苦しく感じるのは、紅茶やコーヒー、お酒や深夜のテレビゲームなど、本人が大好きなものをやめたほうがいいと伝える時だという。
「この4項目はすべて、眠りのリズムを阻害する可能性のある要因です。でも全部を一度にやめる必要はないと思っています。大切なのは、知識として、自然な睡眠が得られる仕組み、それが阻害される要因を知っておくこと。その上で、自分がラクにできることから始めて、効果があるものを取り入れていくのがおすすめです」(安達氏)
眠りの質を上げるためにやって欲しいこと
ここまで、眠りのリズムを乱す要因を排除するために、「やめる」ことを中心に検証してきた。逆に、眠りの質をよくするために「やったほうがいい」ことを安達さんに聞いてみた。
【朝目覚めたら30分間、直射日光を浴びる】
体内時計では、目覚めて朝日を浴びてから14〜16時間後にメラトニンの分泌がはじまり睡眠モードになる。だから窓から1m以内にいて日光を浴びることが大事。寝つきが悪かったからと朝、布団でだらだら寝ていると、睡眠モードになりにくくさらに寝つきが悪くなる悪循環に。
【夕日が落ちる頃に、積極的に体を動かす】
体温が変化するリズムと、睡眠・覚醒のリズムは密接に結びついている。人は体温が上昇すると覚醒モードになり、体温が低下すると睡眠モードになる。体温の上昇がピークになるのは、お日さまが落ちる夕方頃。その時に軽く汗ばむ程度の運動で体温をさらに上げておくと、その後に下がりやすくなり、自然に睡眠モードに入れる。
【夜は照明を睡眠モードに】
目から入る光は、脳に大きな影響を与える。安達さんによると住まいの天井からの明るすぎる照明は、スマホやタブレットの光よりも睡眠への影響が大きいという。できれば夕方からは天井の照明を暗めにしてスタンドのライトだけにする、さらに就寝時間が近づくにつれて少しずつ明るさを落としていけば、その効果は絶大。
今は色温度や明るさを調整できる照明器具も増えている。安達さんはAlexaを活用し22時を過ぎたら照明を暖色に変え、明かるさを70%落とすようにセットしているという。こうしたガジェットを利用すると、いちいち考えて行動しなくても自然に睡眠モードが作れるのでおすすめだという。
【就寝1時間前の入浴】
就寝1時間前に、一時的に体温を上げて、スムースに体温が下がるようにしておく。といっても、汗をかくほどの熱い湯温だと、交感神経が上位になり、逆効果。半身浴で20分くらい浸かっていられるぬるめの湯温が目安。汗をかきはじめたらもう温まりすぎている証拠なので、その前に湯舟から出るのもポイント。
取材・文/桑原恵美子
取材協力/メディシンク