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ベンチャー企業が中途採用を本格化させている本当の理由

2022.11.14

■連載/あるあるビジネス処方箋

今回はベンチャー企業が中途採用を本格化させている本当の理由をテーマに、株式会社CIN GROUPのコピーライター・早川博通(54歳)に取材を試みる。

早川さんは2000年、ネット求人サイトを運営するエン・ジャパン株式会社に入社。制作部門の責任者として3000社を超える企業の採用広告のコピーライティングを担当。各企業の採用担当者や責任者にヒアリングを行い、求人広告原稿を制作。一方で、管理職として新卒・中途含め、300人を超えるコピーライターの採用・育成・評価を手がけた。

株式会社CIN GROUPのコピーライター・早川博通
2014年に退職後、同年にベンチャー企業の株式会社CIN GROUPに入社。Webサイト制作やメディア立ち上げ・運営、コンテンツ制作等に携わる。他に個人名義にて、各種ネーミング、企業ブランディング、経営理念策定支援、採用広報の企画制作を手掛ける。また自社の採用支援をはじめ、ベンチャー企業の新卒・中途採用のコンサルティングも続けている。

なお、直近3回はベンチャー企業への転職をテーマに取材を試みた記事を掲載している。下記の記事もよろしければ、ご覧いただきたい。

前回の記事は、こちらから。
前々回の記事(前編)は、こちらから。
前々回の記事(後編)は、こちらから。

Q:最近のベンチャー企業への転職状況をどうご覧になりますか?

早川(以下同) 2020年3~4月からコロナウィルス感染拡大の影響が深刻化し、多くの企業が新卒や中途の採用を控える傾向は確かにありました。ベンチャーの採用担当者やその上司から中途採用について相談を受けるぺースが、2020年3月以前に戻りつつあると実感したのは、21年の4月前後です。採用意欲の高いベンチャーはすでにその時期に積極的に雇い始めていました。

その頃は大企業が中途採用をまだ本格化していなかったので、今がチャンス!と判断したのかもしれませんね。積極的に雇い始めた業界はITや情報通信系が多く、職種はエンジニアや営業が目立ちました。

私がこれらのベンチャーの業績を確認すると、好調とは言えないケースもありました。2020年3月以前から業績が慢性的に伸び悩み、コロナの影響でさらに悪化したものの、21年4月頃から多少、上向きとなる。そこで反転攻勢をかけようとするが、人が足りない。慌てて採用を始めたと思えるケースも散見されました。

ベンチャーと言えば業績拡大が続き、採用に熱心と思われがちですが、必ずしもそうとは言えないのです。業績の好不調が採用にダイレクトにあらわれるのは、大手よりもむしろベンチャーです。

さらに最近少なくないのが、スタートアップとはいえない類のベンチャーです。スタートアップとは独自のプロダクトやサービスを限りなくゼロベースから立ち上げる組織です。しかしそうではなく、営業代行や販売代理業といった既存事業で起業するベンチャーまでもあたかもスタートアップのような見せ方をしている点を私は問題視しています。

そういうベンチャーが人を集めたり、定着させる手段は、仕事や事業そのものではないことがほとんど。稚拙な事例で恐縮ですが、例えば社員同士でのBBQ(バーベキュー)大会であったり、クラブを貸し切ってのイベントであったり。

そこに、すでに無理があるように私は思うのです。そもそもスタートアップには独自性の高いプロダクトやサービスがあります。そうでないと生き残れない。だからこそ、意識の高いエンジニアや営業経験者がその優れたビジネスや可能性に目をつけ、転職しようとします。こういうスタートアップは必要以上にアピールはしない。しなくとも、優秀な人が次々とエントリーしてくるのです。

ところが、スタートアップと言いながらも、既存の製品や商品、サービスを多少、加工した程度でビジネスをしている場合、事業や仕事そのもので差別化を図ったり、魅力づけをすることは非常に難しい。既存事業でもコンセプトや志などに特徴があれば、それはまた別の魅力となるのですが、多くの場合はそれがなく、収益が第一義にきてしまいがちです。

これでは、優秀な人がエントリ―はしない。入社したとしても、次々と辞めていく。私が観察していると、既存事業で立ち上げたベンチャーの半数以上がこのタイプです。

あるベンチャーは飲食店や賃貸不動産3社のFC(フランチャイズ)に加盟し、その運営をするオフィスを構え、「スタートアップ」と言っていました。こういうケースも実際にあるのです。

Q:なるほど。スタートアップの定義はないから、様々なタイプがあるのでしょうね。中途採用に熱心なベンチャーは、どういう人材を求めているのでしょうか?

もともと、多くのベンチャーははるか前から中途採用で即戦力を求めてきたのですが、

その傾向がさらに強くなっています。ビジネスの状態が2020年3月以前に急激に戻ろうとしているから、それに対処する人をなんとか採りたいと思っているのでしょう。

ここ15~10年、ベンチャーは中途で即戦力を求める一方で、会社のカルチャーやミッションにフィットしうる人材を採用する傾向がありました。チームビルディングをするうえでは、同じような人材でそろえたほうが得策と考えていたのでしょうね。最近は、それが変わりつつあります。「こういう仕事をこんなレベルで確実にできる人」といったファンクションにフィットする人を雇うようになっているのです。

背景には、少なくとも2つの理由があります。1つはファンクションに確実にフィットする人を選ばないと、立ち上がりの早い人材にはなりえないからです。例えば、営業担当ならば初の契約成立までの時間が短く、その後もコンスタントに契約が取れる人です。

もう1つの理由はカルチャーやミッションに合う人を採用し、特定のタイプの人材に育てあげるのは必要としても、そのようなタイプだけでは組織や人材の多様性がなくなってしまいかねないことを懸念しているからと思います。やがてはグローバル展開するかもしれないことを踏まえ、海外企業では重視されている多様性を大切にしようとしている、と見ることもできるでしょう。

このあたりは特に(前述したような)スタートアップで、つまり、他社を圧倒する製品や商品、サービスがある企業がきちんと心得ているように思います。

後編に続く

取材・文/吉田典史

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