小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

大企業からベンチャーへの転職で「若手が会社に抱く不満」は解消されるのか?

2022.11.09

■連載/あるあるビジネス処方箋

今回と次回の2回にわけて、ベンチャー企業の特に20代の中途採用をテーマに取材を試みた記事を紹介したい。

話をうかがったのは、人事コンサルタントの篠原さくらさん。大学を卒業後、2012年にIT企業のサイバーエージェントに新卒として入社し、2年目以降は人事マネージャーとして新卒採用や広告事業人事などを担う。

その後、デロイトトーマツコンサルティングにて人事コンサルティングに従事。29歳でベンチャー企業・WARC執行役員に就任。人事責任者として採用や定着、評価など全般をリードする。2022年に退職し、CIRCLES株式会社を代表取締役として創業し、主にベンチャー企業などの採用、評価、組織開発など人事領域の支援をする。

ベンチャー企業は大企業の20代の不満を簡単に解決できるのか

篠原さんをはじめて取材したのが、2020年。その時のテーマは、部下の育成。1時間半のインタビューで、私が特に印象に残ったのは次の言葉だ。

「大切なのはwhere to compete。自分がどこで競うのか…競うことができているか…。これらを常に自問自答したほうがいい、と思います。そのために強み、弱さは何かとしっかり考え、能力が発揮できるところへ行く。「上司に恵まれていない」と他責をしているよりは、そのような行動を取るほうがいい人にめぐり会える機会が増えると思います」

人事コンサルタントの篠原さくらさん

where to competeはキャリア形成を考えるうえで大切な視点で、私もよく考える。読者諸氏にも考えてもらいたく、今回あらためて篠原さんに取材を試みた。

Q 最近の20代の社員のベンチャー企業への転職をどのようにご覧になりますか?

私がこの10年程で関わってきた範囲で言えば、10年程前は大企業からベンチャーに転職する人は少なかったのですが、現在は大企業に新卒で入社し、2~3年で退職し、ベンチャーに転職する人が増えています。

その理由の1つには、私が新卒でベンチャーに就職した2012年の頃に比べると、創業して日が浅いいわゆるスタートアップの企業が増えていることがあると思います。このような企業が、特に積極的に採用をしているのです。

ベンチャーからベンチャーへの転職にもある程度のリスクはありますが、大企業からベンチャーへの転職は双方の風土や体質が大きく異なるため、リスクが大きいのかもしれません。転職後、活躍する人が多数いる一方で、ベンチャーの風土や体質になじめずに短い期間で退職し、大企業に戻る人もいます。それでも、私はベンチャーへの転職をキャリア形成のうえでの選択肢の1つとしてお勧めする場合があります。

特に20代で、現在勤務する大企業で強い不満を持ち、停滞感を感じている方にはいいのではないかな、と思います。ベンチャーに転職後、仕事の面で大変なことが増えるかもしれませんが、30代になり、振り返った時、「あの時に転職し、キツイけど乗り越えることができたからよかった」と思えるかもしれません。すべてのベンチャーとは言いませんが、多くのベンチャーにはこのような停滞感を打ち破る魅力があるのです。

Q ご自身もベンチャー企業に転職をしていますね。

私は新卒で当時(2012年)、単体で社員数1000人程のベンチャーに就職し、その後、コンサルティング会社を経て、創業直後のベンチャーに勤務しました。3つの会社のそれぞれのステージで不安を感じる時は多少ありましたが、「新しいことをしたい」「楽しいと感じる仕事に挑戦したい」といった意欲のほうが強かったのです。今まで経験のないことに取り組んでいると心底、わくわくするのです。

その時々の自分の思いを大切にして、キャリアを作ってきたように思います。20代の時は、根拠のない自信を持っていたのかもしれませんね。上手くいかないならば、ほかの会社にいつでも転職できると思っていました。

Q ベンチャー企業は採用試験の際、エントリー者を集める方法が上手いですね。求人広告では例えば、「当社は権限が20代でも委譲されるから、働きがいがある」「大企業は40代以上にならないと管理職になれないが、ベンチャーならば20代でマネージャーになれる」とアピールしています。

現在の職場に不満を持つ人たちの心理を見抜き、それを解消してくれるかのようなニュアンスを感じますが、私はそのようなうたい文句に違和感を覚える時があります。そこまでベンチャーは20代の不満を簡単に解決できるのだろうか、と思えるのです。

ベンチャーでも様々なタイプがありますから、アピールの仕方は多様です。一概には言い切れないものはあります。売上などの業績や社員数で言えば、大企業とも言えるようなメガベンチャーや、株式上場を実現した勢いのある企業、あるいはそこまでの成長のスピードはないものの、着実に成長している企業など多様です。

確かに特に勢いのあるベンチャーは学生や現在、大企業に勤務する20代の社員に向けて、「20代の頃に大幅に権限を委譲され、大きな仕事ができる」「成長ができる環境が整っている」などとアピールするケースがあります。

そのようなアピールはベンチャーの1つの姿として誤りではないのでしょうが、例えば「権限移譲」については具体的に考えてみる必要があるのかもしれません。権限移譲は、ベンチャーと大企業ではその移譲のタイミングや内容が異なるのです。

一例として、私が知る2人の男性のケースを紹介します。新卒、22歳でそれぞれメガベンチャー、大手商社に入社しました。10年後の現在、ともに30代前半。メガベンチャー勤務の男性は20代前半から上司から大幅に権限移譲をされ、大きなプロジェクトを次々と担当する現場の責任者・マネージャーになることができました。そのような実績が認められ、現在は社員数百人のグループ会社の役員をしています。大手商社の男性は、20代の頃はそこまでは権限が委譲されてはいないようでした。現在は、グローバル規模の大きなプロジェクトの現場責任者をしています。

2人の20代の時点だけで「メガベンチャーが若い人にとってやりがいがあり、大手商社は若い人にはつまらない職場」と言えるのかと言えば、そうではないと私は考えているのです。また、30代前半の今の時点だけでも正確には判断はできないでしょうね。10年後、双方が40代前半になった時に比べると、大手商社の男性のほうが大きなプロジェクトを任され、活躍しているのかもしれません。ですから、ある一時期の権限移譲のあり方だけでその企業を捉えるものではないと思います。

(後編に続く)

文/吉田典史

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2024年4月16日(火) 発売

DIME最新号は「名探偵コナン」特集!進化を続ける人気作品の魅力、制作の舞台裏まで徹底取材!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。