■連載/あるあるビジネス処方箋
今回と次回は、鉄人レースと言われるトライアスロンに参加する会社員に取材を試みた内容を紹介する。
サンフロンティア不動産(正社員数357人)の及川真樹人事部長(49歳)は1997年に明治大学法学部卒業後、司法書士事務所や印刷関連の自営業を経て2005年にサンフロンティア不動産入社。総務部や人事部に所属し、2018年から人事部長。
現在までに10以上の大会に出場した。及川さんが通算5回出場した佐渡全島で繰り広げられる「佐渡トライアスロン大会」(毎年9月開催)のコースは国際Aタイプ・国際Bタイプ・国際Rタイプ(3人1チームのBタイプリレー版)。
最も長い国際Aタイプ(ロング)は、トータル で236.2km(制限時間:21:30)。
競技の順番と制限時間は次の通り。
①スイム(水泳) 4.0km(制限時間:8:40)
②バイク(自転車) 190km(制限時間:9:00)
③ラン(マラソン) 42.2km(制限時間:16:30)
過酷すぎるトライアスロンに挑戦しようとしたきっかけは?
Q、トライアスロンは、相当に過酷な競技に見えます。時々、亡くなる選手もいると聞きます
及川:例えば、スイム(水泳)の最中に心不全などになり、亡くなる方がいるようです。大会の主催者をはじめ、関係者や個々の選手はけがや事故になるのを防ぐために、細心の注意は払っていると思います。私も日ごろからトレーニングをしてコンディションを整えています。大会当日は準備運動を念入りにします。それでも、死に至るかもしれないといった恐怖心は、未だにあります。
この8年程で10回の大会に参加し、途中棄権をしたことはありません。一番はじめの大会は計測器を落としたことに気づかず、失格になってしまいました。それ以降は毎回、完走しています。
バイク(自転車)からラン(マラソン)になり、走り出した直後に気分が悪くなり、栄養補給で食べたものを吐いてしまうこともありました。「どうしてこんなに苦しいことをしているんだろう。もう、やめよう」。こんなことを思いつつ、走っています。体が痛いし、苦しい。苦しくて仕方がない。沿道から皆さんが応援してくださるので、それに応えたい。もう、やめよう、やめようと思いながら走る。
ゴールが近いところでは、その声援がさらに大きくなります。あの声援があるから、続けられるのです。2019年の大会では、家族と一緒にゴールをすることができました。これも、私の夢でした。しばらくすると、あの苦しみは消えて満足感や楽しさだけが残るのです。
Q、いつから始めたのですか?
及川:8年程前になります。2013年から、弊社が公益社団法人日本トライアスロン連合と、佐渡島で行われる「佐渡国際トライアスロン大会」に協賛することになりました。当時、その窓口である総務部に所属していたこともあり、多くの関係者とお会いしました。皆さんが、一生懸命に大会の運営に力を注いでいたんです。
なぜ、これほどに情熱的になるのかな、大変な魅力があるのもかもしれないと関心を持ち始めました。自分がまずは挑戦し、経験してみないとそのおもしろさを伝えることができないと思うようになったのです。
それより4年程前の2009年から、マラソンはしていました。最初は5キロ走るのもつらかった。練習をして距離を伸ばしていきました。ハーフマラソンの完走をしてから、1年以内でフルマラソンを走れるようになりました。
トライアスロンをはじめる時は、スイミングが心配でした。中学、高校の体育で多少、泳いだくらいなのです。ジムで泳ぐと、当初は50メートルが精一杯。少しずつ距離を伸ばしていきました。トレーニングは仕事を終えてから平日は30分から1時間ぐらいで、週に3回程です。
Q、10~20代にスポーツをしていましたか?
及川:中学、高校、大学でバレーボールを10年程していました。明治大学の体育会は体育推薦で入学した学生が多く、一般入試の私では活躍できる機会が少ないので、準体育会と言える同好会に4年間所属していました。20代の頃は、その時のメンバーで社会人チームを作っていました。
バレーボールでは長距離を走る練習はほとんどしなかったのですが、基礎体力はある程度できていたのだろうと思います。フルマラソンを完走する下地はできていたのかもしれませんね。それでも、つらいですよ。
次回に続く
及川さんは2019年の「佐渡トライアスロン大会」では、次の成績だった。
総合268位/734人 Time 13:40:26
①スイム:1:40:04 482位/984人
②バイク:7:02:33 266位/896人
③ラン:4:52:04 317位/734人
途中棄権は、約200人。
2022年9月の「佐渡トライアスロン大会」に出場予定。
撮影/星野 佑
文/吉田典史